雲泥

 その昔、吉田茂という首相がいた。1953年というから半世紀以上も前の話だ。この首相が衆議院予算委員会で質問中の社会党議員に対して「バカヤロー」とつぶやき、この発言が衆院解散、総選挙の切っ掛けとなった。個性的でワンマンな宰相だったが、物事をはっきりと言う毅然とした人物だった。今、ワシャらが戴く、尻から空気の漏れる首相とはずいぶん差がありますぞ。
 吉田茂の頼もしい発言を聞いてみましょう。
社会党は好んで米帝国主義を口にする。公平に見てソ連中共こそ帝国主義の権化であることは、史実の立証するところである」
「国土防衛の手段たる武器の範囲を限定するなど、自らの手を縛するような道を選ぶべきではあるまい。社会党の非核武装宣言の提唱は、極めて非現実的であるのみならず、選挙目当ての場当たりとしか思われぬが、国民を迷わせる効果は軽視できない」
共産主義は歴史の必然などであるよりも、むしろ反対に、新しい型の独裁政治である」
共産主義者は約束を重んずるものであるかどうか。これも明白に否である。(中略)共産主義者は、目的のためには手段を選ばぬところにその特色がある。その約束は常に破られている」
「かかる国(共産国)と安易な考えで国交を開くが如きは、国家国民の安危休戚を思わざるものと酷評されても致し方あるまい」
 蓮池さんたち拉致被害者5人を「北に返せ」といった「バカトウヤロー」が、吉田茂の直系派閥の長だったとは……吉田さん、草葉の蔭で泣いていることだろう。
「バカヤロー」のことはさておき、ワシャらが戴く福田さん、北朝鮮が核施設の無能力化作業を中断すると発表したことについて、「どういう影響があるか分からない」と言ったそうだ。煮えきらない男だねぇ。あんた、日本国の政治の頂点に立っているんだよ。吉田茂と同じ立場にいるんだぜ。あんたが判断しなくて、誰が国を正しく導いていくのさ。
 天は、時として大阿呆に国の転轍機を握らせることがある。その時に進路の選択を誤ると国は滅びてしまう。資源が枯渇し、物価は高騰し、隣国が虎視眈々と日本を狙っている。ワシャは幕末以来の国難だと思っているが、こんな時期に「ほっほっほ」に命運を預けなければならない国民は悲惨だ。ここまで頼りなく不甲斐なくやる気もないなら、さっさと政権を投げ出せばいいのに、権力だけにはしがみついていたいらしい。嗚呼、已んぬる哉。