テレビという害毒

 テレビ黎明期に評論家の大宅壮一が「一億総白痴化」を警告してすでに50年が過ぎている。彼の予言は的中した。今やテレビ番組はバカどもに席巻されたと言っても間違いではない。
 テレビ業界のあまりの低劣さに、富良野へ隠居してしまった脚本家の倉本聰さんもこう言っている。
《さわがしくなければテレビでない。馬鹿笑いしていなければテレビでない。(中略)テレビ事業にたずさわっているすべての人々が、もはや立派に白痴化しており、しかもその己に気づいていない》

 最近、芸人の楽屋話暴露番組が全盛だが、この手の番組で千原ジュニアという貧相な顔の芸人をちょくちょく見るようになった。こんな狂相を持っている人間が、つたない喋りで人を楽しませることが出きると思っているところがおこがましい。
 元々、中学校で習う漢字すら読めない連中なのだ。そいつらの話に内容があるわけがない。身内や仲間の失敗や粗を暴露して笑いにしているだけのことで、居酒屋で交わされるバカ話と同レベルのものなのである。
 さんま、紳助に代表される条件反射トークの得意な貧相芸人が台頭しはじめて、総白痴化は拍車が掛かったような気がしてならない。彼らの雑談で大爆笑している白痴どもは、どうやったって佐高信の著作で大爆笑できないだろう(笑)。それは冗談だが、小三治の「藪入り」では笑えないだろう。

 今は有名であるというだけで、テレビに登場し、テレビに出ることで更に有名になって、存在しているだけで大きなギャランティが発生する。だから三流の芸能人ですら、高級腕時計や高級外車を乗り回し、駆け出しのアイドルや女子アナを侍らせて、夜な夜な六本木で遊び呆けている。休日は乗馬やセーリングを愉しんで、長期の休みが手に入れば海外で骨休めときたもんだ。
 白痴らは、彼らが金を稼ぐための基盤を支えているのが、企業からのスポンサー料だということを知っているのだろうか。彼らが湯水の如く使っている銭は天から降って来るわけじゃない。つまり、テレビのこっち側で口を開けて笑っている白痴が、その番組のスポンサーの製品を高く買って紳助の娘の留学費用を捻出しているということなのだ。