土曜日の上洛記の続きである。
ワシャは午前7時27分名古屋発の新幹線こだま532号の2号車5列Dに座って本を読んでいた。ワシャが乗った三河安城では車内はガラガラだ。窓際の5列Eに鞄を広げてメモをしたり、電子手帖で字句を確認したりして快適な時間を過ごしている。
車内は静岡あたりから混み始めた。新富士の手前で窓際の席に置いてある鞄を足下に下ろす。品のいい女性が「よろしいですか?」と言いながら、座ってくれることを期待しつつ新富士に到着、「よろしいですか?」と言ってその席に座ったのは、体格のいいサラリーマン風の男性だった。残念!
でもね、周囲への隣席への配慮はできる紳士で、二人の間に横たわる肘掛に腕をのせてくるようなことはしなかった。もちろんワシャものせないけどね。お蔭で快適な列車の旅が続いた。
三島でどっと客が乗りこんでくる。ほぼ満席で立っている客が数人いる。
そんなとき、事件は起きた。
ワシャの右側後方の三人掛け4列ABCあたりで男と女が口論を始めたのだ。何気なく背後を覗うと、通路に立っている女と窓際の席に座っている男が顔を真っ赤にして言いあっている。
女「わたし叩いてません」
男「膝を何度も叩いたじゃないか」
女「あなたが目を覚まさないから、軽くは叩きました」
男「叩いたじゃないか」
女「でも、あなたがB席に荷物を置いて寝ているから、席を空けてもらおうと思って、そうしたんです」
なるほど、窓際の4Aに30代の太ったオタクっぽいサラリーマンが座っている。そいつが隣の4Bに黒い鞄を置いている。その隣、4Cには痩せた男が座っている。新富士から乗ってきた30代のジーンズを履いた太った女が、その席に目をつけたんだな。太っているから座りたいだろうし。そこで通路から手を伸ばして男の左の膝あたりを突ついたのだろう。男が起きないから何度も突ついたんだね。その起こしかたにデリカシーがなかったか、女が竹内結子じゃなかったからか、原因は分からないが、とにかく男はむっとしたんだろう。
2号車全体に響き渡るような口論になってしまったので車掌が飛んできて仲裁に入った。
(下に続きます)