いちごアイスバー10本

 昨日は暑かった。ワシャは出勤していたのだが、窓際のワシャの席は32度。南向きの窓には自腹でスダレも下げてある。館内空調もMAXになっていて、それでも32度から下がらない。だから大量の扇風機を自分で調達して持ち込んで回しているが、そんなものでは焼け石に水状態なのだ。
 たまたま本社に行く用事があったので、前の職場に電話をしてみると、休日にも関わらず部下が出勤していた。手ぶらではなんなので、近くのコンビニで「いちごアイスバー」を4本買って訪なった。
 この時期、前の職場は忙しい。そのため通常の事務所から小さな会議室に移動して仕事をする。大きい事務所で空調を入れると不効率でしょ。だから小さい会議室にこもって、そこだけにエアコンを入れて事務をするという按配である。ここもね、4年くらい前まではエアコンがなかったんですよ。窓は東南に開かれていて、暑いいことといったらありゃしない。だから総務とかけあってなんとか小さなエアコンを2台つけてもらったものである。
「快適です」という前の部下とともにいちごアイスバーを食したのだった。
 これが昼ごろの話。
 午後からは気温がどんどんと上昇し、岐阜県多治見市では39.9度を記録した。ワシャの職場は、すでに建設してから30年を経過する。空調機も前時代のもので、修繕は何度かしたけれど、まぁ、だましだまし使っているというのが正直なところである。もちろん昨日もフル回転をさせたが、気温の上昇に機械がついていかない。室内の温度計で33度を超している。来客からは苦情のヤリだ。
 こうなると従業員のほうも、ぎすぎすとし始める。同僚への言い方がついついきつくなるものである。午後4時がピークだったかなぁ。日が傾いて客からのクレームは収まったが、事務室のほうは西日が入り出して、かえって暑くなりはじめる。午後5時過ぎ、パートが帰りはじめて、事務室が社員だけになった頃、男の社員がささいなことから口論をはじめた。両者を調停しなければならない店長は定刻で帰ってしまった。こりゃワシャがなんとかしなければいけない。
 ワシャはそそくさと事務所を出た。近所のコンビニに行って、再びいちごアイスバーを6本購入したのである。それを事務所に持ち帰ったとき、二人の若者はまだ理屈をならべて議論をしていた。
「集合ー!」
 とワシャが大声をあげる。なにしろワシャの声はでかいからね。事務室に散らばっていた社員がわらわらと集まってくる。もちろん口論していた二人もね。
「ちょっとクールダウンしようぜ」
 そう言いつつ、いちごアイスバーを配ると、さすがに暑い事務所でのこと、みんなの顔がほころびます。
 はふはふ言いながらアイスを食べていると、ほんの少し、温度が下がったようだった。