月曜日の日記でもちょこっと触れたが、御園座の歌舞伎が面白い。「与話情浮名横櫛」の与三郎を演じる市川染五郎がよかった。歌舞伎座で海老蔵、国立劇場で梅玉、大阪で団十郎の与三郎を観たけれど、染五郎の与三郎が一番はまっている。
だいたい与三郎は優男(やさおとこ)でなくてはならない。海老蔵ではがたいがよすぎるし、梅玉では顔がもうひとつ、団十郎にいたっては太りすぎだ。そこへいくと染五郎は体は細く、色男で、育ちのよさが全体からにじみ出ている。これならお富も苦労してみようという気になろうというものじゃないかえ。
源氏店で蝙蝠安がお富を強請っているときに、門口の上がり端で話をうかがっている風情がいい。蝙蝠安に替わってお富の前に立つ姿が綺麗だ。
「ええご新造さんへ、おかみさんへ、お富さんへ、イヤサお富、久しぶりだなァ」の決め台詞も、すこーしばかり甲高くていい声でしたぞ。
うんうん、子どもだ子どもだと思っていたが、染五郎もいい役者に育ってきた。これだから歌舞伎は止められまへん。また、大向こうから「高麗屋!」と声を掛けたくなっちまいました。