素晴らしき送別会

 母校の中学校の校長先生が定年退職される。36年の長きにわたって我が町の教育に携わられ、最後の7年間は母校の校長として全うされた。
 ワシャは母校の同窓会の役員をしている。このため年に1、2度、同窓会の役員会などでお会いしてお話をさせていただいた。謦咳に接したのは延べでも十数回あっただろうか。腰の低い校長先生で、白髪、白眉、意志の強そうな眼差しは常に優しさを湛えていた。

 今日、駅前のホテルで先生の退職祝いのパーティーが催される。夕べの酒が残っている重い頭を抱えながらも、とにかく出かけることにした。
 パーティーは正午ちょうどに結婚式場を使って始まった。丸テーブル8つ、PTA、同窓会、地域の役員など50人ほどが分散して座っている。照明が落ちて、入口にスポットライトが当たる。
「校長先生のご入場です。盛大な拍手をもってお迎えください」
 司会の流暢なアナウンスが響く。
 校長先生は照れながら、各テーブルに点頭しながら正面舞台まで進まれた。拍手が盛り上がる。
 開会の言葉、何人かのお祝いの言葉が続く。この中で先生の経歴が紹介された。先生は石川県能登門前のご出身だという。
 ほう、能登門前か……
 脳裏に一年前の能登半島地震の救援に赴いたときに見た奥能登の風景がよみがえった。あの山野を少年時代の先生は駆けまわっていたんだ。
その後、愛知教育大学に進学し、そのまま愛知県で教職に就かれた。そして36年を勤め上げて、退職を機に奥様とともに、千葉の長男夫婦のところに移住されると締め括られた。
え、千葉に移住?市の教育長という選択肢もあるほどの人物だ。校長OBには他にもいろいろな退職後の公職があり、地元で名士として余生をおくることができる。しかし、先生は一切の名利を捨てて千葉に旅立つ。
ワシャは「潔い」という言葉が好きだ。行動が好きだ。先生のこの身の処し方は、まさに潔かった。
(感動の後半をどうぞ↓)