NHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」、ヒロインの和田喜代美(貫地谷しほり)は落語家になるために大阪の徒然亭草若(渡瀬恒彦)のもとに入門を果たす。そこから悲喜こもごものドラマが展開していく。
その中で印象に残ったセリフがある。草若師匠の内弟子として修行をする喜代美にある登場人物がこう言った。
「いい師匠と出会えてよかったなぁ」
ホントにそうだ。いい師匠との出会いほど未知の人生を明るく照らしてくれるものはない。
島津斉彬に出会った西郷吉之助、勝海舟に出会った坂本竜馬、吉田松陰と出会った高杉晋作……幸運にも若者たちは人生の緒において英邁な人物から薫陶を受けることができた。
厚顔の美少年だったワシャは地元の高校に進学した。そして厚顔だったので予習もせずに最初の英語の授業に臨んだ。運が悪かった。まったりとした節回しで話す英語教師は「ミスタワルシャワ?」とワシャの名前をイの一番に呼びやがった。
ワシャはひょうきんが服を着ているような小僧だったので、
「へい」
とニヤニヤしながら立ちあがった。返事が「へい」なので、クラスメートがどっと沸いた。これが気障な英語教師にカチンときたらしい。眉間に皺を作りながら「3行目まで訳しなさ〜い」ときたもんだ。だからワシャも英語教師の口真似をして「わかりませ〜ん」とやっちまったもんだから、クラスの連中は大爆笑。英語教師は顔を真赤にして「なぜ予習をしてこないんだ」とネチネチネチネチ怒った。でもね、教師に怒られるのなんて屁とも思っていないので、教室の窓から中庭の万朶の桜を愛でていたわい。
ワシャはね、ユーモアを解するタイプの教師には人気があるんだが、クソ真面目なタイプには嫌われる。真面目でプライドの権化のようなこの英語教師との相性は最悪だった。
この教師は3年間、ワシャの英語の担任をして、お蔭様で中学校の時に好きだった英語が、高校を出る時にはもっとも嫌いな教科になってしまった。(続く)