ドラマ官官接待

 昨日の朝日新聞社会面に《江戸時代も「官官接待」 想定問答や献立調査…藩ぴりぴり》という記事があった。内容を要約すれば、「江戸期に大名監視をしていた巡見使が鳥取藩を訪れた際の接待マニュアルが見つかった」ということだ。昔も中央からやってくる役人には気をつかったんですな。
 さて、ここからはワシャの創作である。ホントに創作ですからよろしくね(笑)。

 現代の巡見使の大元締めともいえる役所に会計検査院というのがある。最近はずいぶんまともになってきたが、ちょっと昔は大変な対応を地方は強いられた。国の省庁を通じて、各県に会計検査の連絡が入ると大騒ぎだった。建設省なら何月何日から何月何日までの1週間、通産省はいつからいつまでの1週間といった具合だ。そして会計検査員は班長以下数名でやってくる。県庁所在地に宿泊して、週の初めは県庁で検査をして、週の半ばから市町村の検査だ。県が手配した黒塗り運転手つきの高級車でやってくる。
 まず検査員の宿泊しているホテルを出ると県の職員から電話が入る。
「9時10分にホテルを出発しました。10時には到着予定です」
「了解しました」
 市町村は首長以下、万全の体制を整えて検査員を待つ。
 10時20分、黒塗りの車が、市役所正面玄関あたりをうろうろしている市民を蹴散らして滑り込んでくる。会計検査員様のお通りだ。平民どもはどけどけどけー!玄関には助役や部長が20分も前から出迎えのために待っている。その出迎えの人数を確認し、検査員は満足そうに頷いて、玄関にその第一歩を印されたのだった。
 その後、助役の先導で検査員は市長応接に通されて、玉露と高級和菓子で市長と歓談、11時過ぎに検査会場の大会議室に移動する。
 そこには関係部長以下数十名の職員が直立不動で検査員の入場を待っている。併せてそれぞれの部署では受験者を支援するためにその倍の職員が待機している。11時10分、検査員様ご入場、筆頭部長の号令で一同最敬礼。会議室中央の白布の机が検査員、随行の県職員は脇にあるやや小さめの白布の机に陣取った。
 検査員は白布の机に足を投げ出すと、おもむろに煙草を吸い始める、煙と一緒にこう吐いた。
「予定表」
 その声に脇の県職員がピクッと反応し、あわててB4のスケジュール表を両手で捧げ持ってくる。検査員、それをひったくるようにして取り上げると、ぶつぶついいながら眺めている。そしておもむろに受験者を見てこう切り出した。
「し…」
 何を言い出すのか検査員。この続きは明日のココロだ。