別れ

 昨日の夜、某氏の送別会がJRの駅前であった。座敷での一般的な送別会ではなく、イタリアンレストランでの開催だった。記念撮影も、堅苦しく整列したものではなく、送別する人を自然に囲んだだけのやわらかい集合写真だった。こういう一枚がいい。
 某氏は、なにしろ定型的なことが苦手な人である。一般的なスピーチとか挨拶を話すのを聴いたことがない。とにかくなにかを仕込んできて、ウケを狙ってくる。昨日も、記念品の贈呈が終わって、送別者挨拶となったのだが、そうすると机の下からごそごそと細長いパネルを出してきて、壁にそれを張り出していく。「なにをするんだ」と思って見ていると、今話題の池上彰とか報道番組を意識したようで、壁一面にテーマを10個ほど張り出して、それを参加者に選択させ、ひとつひとつに解説を加えるという作戦に出た。おもしろかったか面白くなかったかは、出席者個々の判断にゆだねるとして、ワシャ的には送別会答辞の新手法を見たような気がした(笑)。

 それにしてもひとつのドラマが終わるというのは寂しいものですな。このところ村上もとかの『龍』(小学館)を読みなおしているんだけど、全42巻の超大作で、それも後半の筋立てが入り組んでいて、登場人物をしっかり押さえていかないと、なにがなんだか混乱してくる。
 それでもね、最終盤になってくると、主要な登場人物がひとり、またひとりと斃れていくのが寂しい。悪役とはいえ「えええ!ここで鳳花(ホンホワ)が自害するのか!」とか、ずっと主人公の龍を支えてきた「曹徳豊(そうとくほう)の壮烈な人生が、ここで終わるのか!」と叫んでしまう。
 そして巻数も40巻を過ぎて、残りが少ないことが物理的に見えてくると、これがいかにも寂しいのですね。物語にも人生にも終わりや区切りがある、そんなことは百も承知なのだが、その時々には、得も言われぬ感慨のようなものが突き上げてくる。何度でも読み返せるコミックですらそうなのだから、いわんや読みなおしの効かない人生においてをや。

 あと1巻で『龍』の大団円なので、今から読むのだった。ちょっと泣くかも(笑)。

 午後0時17分、やっぱり泣いてしまった。