どこかのギャラリーのホームページで加藤唐九郎の紫匂志野茶碗が売り出されていた。売値が確か1800万円だった。小さな赤茶けた茶碗ではあるが名工唐九郎の手になるものときけばそのくらいの値段はついてしかるべきだろう。
『現代陶芸茶碗図鑑』(光芸出版)には陶芸作家500余人の抹茶茶碗が掲載されている。先頭はもちろん唐九郎だ。径13センチ高さ8.5センチの筒型の志野茶碗で、唐九郎にしては面白味のないべったりとした駄作である。それでも1千万円の値がつけらている。その下に備前の藤原啓、萩の三輪休雪の茶碗の載っているが、そのあたりが200万円前後なので、唐九郎が桁違いだということが理解できよう。例えば名作「氷柱」や「鬼ヶ島」、あるいは立原正秋が銘をつけた「紫匂」あたりは、おそらく金額がつかないだろう。
昭和60年12月24日、陶芸界の異端児は東春日井郡守山町(現名古屋市守山区)の質素な板張りの部屋で息を引き取った。享年88歳。