気が散るちるちるチルチルミチル

 ワシャは子どもの頃から落ち着きがないと言われている。軽躁というのかおっちょこちょいというべきか、とにかく気があちこちに飛んでいく。年齢を重ねて少しは落ち着いたフリをする術を覚えたが、本質的なところは変わっていない。
 今、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を読んでいるのだが、読んでいる最中にいろいろなことを考えてしまう。
《長老がこれほどはっきりと、二人の兄の片方の消息だけ尋ねてきたのが、アリョーシャには奇異に感じられた。》
「あの店のショーウインドウの黄色のネクタイ格好よかったよな、やっぱり明日、仕事帰りに買いに寄ろう」
《盗んだ品物や金のことでも、心は少しも乱れなかった。なぜなら(やはりこれもそう判断したのだ)盗みを行ったのは物欲のためではなく、嫌疑をほかにそらすためだったからだ。》
「そう言えば今度、小遊三師匠が隣町にやってくるんだったなぁ、チケットを頼んでおこうっと」
《アレクセイ、わたしがおまえをあの人のもとに遣わしたのは……》
「なんだ?この臭い、へんな臭いがする。あれ?くせい」
《神父さま、先生方、これは実に驚くべきことです。》
「うわっ!びっくりしたな、もう……なんでこんなところに亀がいるんだ?」
 といった具合で、ちっとも読書に集中できないんですな。これは『カラ兄弟』だけでなくて、何を読んでいても、脳裏に別なことが次から次へと浮かんできてしまう。
 こんな風だから子どもの頃も1時間授業に集中するなんていう芸当はとてもできなかった。だからアホになってしまったんだが、それは今でも同じでだらだらとした会議なんか退屈で、気があちこちに散ってしかたがない。
だから、谷川浩司『集中力』(角川oneテーマ21)、多湖輝『集中力』(こま書房)、中島恵子監修『集中力記憶力ドリル 3・4歳』(学研)などで勉強しているのじゃが、成果はあまり上がっていないのである。