まがい物

 小林まことの名作コミックに『1・2の三四郎2』がある。この中で主人公の三四郎のライバルとして赤城欽一というレスラーが登場している。格闘技キングと自ら称し、三四郎の仲間をことごとく半身不随にしてしまう。そしてついに三四郎と赤城の決戦になる。この戦い、前半は赤城優位だったのが、後半になってタフな三四郎に追い込まれ、単細胞の赤城はきれてしまう。急所を殴り耳に噛みついて、試合を壊してしまった。ラスト、冷静に試合を運ぶ三四郎は、こう言い放ってブレンバスターで赤城を陥落させた。
「プロは負けるわけにはいかねえんだ。おめえのようなシロートにはな」
 内藤VS亀田の試合を見ていて、このシーンが脳裏に甦った。

 亀田父や兄興毅が大毅に反則指示をしていた。「ヒジでエエから目に入れろ」と興毅が叫んでいたことに対し、「あれはヒジを上げてしっかりガードして、目の位置を狙えいう意味」と言い訳をしているが、この一家は日本語もまともに理解できないのだろうか。「ヒジでエエから目に入れろ」をどう曲解すれば、興毅の弁解になるのだろう。ひじ打ちやローブローなどを指示したと思われる声がテレビ中継に入っているという情報もある。内藤大助も「もみ合いになると、グローブを相手の目に入れる行為(サミング)や相手の足を止めるために太ももをたたく見えない反則があった」と打ち明けている。
 親子バカ、もとい、親子鷹を気取ってはいたが、単細胞オヤジの指導ではまともな選手は育たなかった。馬脚ならぬ亀脚を現した格好になりましたな。

 リッピサービスもあるのだろうが、内藤は大毅を評し「思ったより防御勘があった。もっとクリーンにやればいいボクサーなのに」と言っている。厳しい修行に耐える三兄弟にはボクシングのシロートなりに素質はある。ただエディ・タウンゼントのような名指導者がいないことが悲劇だ。彼らの指導者があの単細胞の父親でなかったら、三兄弟の人間性もずいぶん違ったものになっていたものを。

 先日、芸能界のまがい物の沢尻が泣き落ち、WBC戦で亀田家が没落した。後はモンゴルで息を潜めているまがい物横綱が消えてくれれば言うことないんだけどね。