昨日の夜、職場からの帰り道、公園通りを歩いているときに、背後でガサリと音がした。ワシャは三河のゴルゴ13と呼ばれているので、咄嗟に身をひるがえすと、脇の植え込みの中に転がりこんだ。背後からの襲撃に備えるためだ。植え込みの蔭から敗後を覗うが、誰もいなかった。しかし、ワシャはすぐに警戒を解くようなおろかなスナイパーではない。10mほど先の街路灯に浮かぶ路上をしばらく注視していた。
2分後、ようやくワシャの背後をとったモノの正体が判明した。街路灯のスポットライトの中、黄色い大きな葉がヒラヒラと舞いながら地面に落ちて「ガサリ」と音をたてたのである。見上げれば10mほどの桐の木が立っていた。
不審な音の因を突き止めることができたので、ワシャは警戒態勢を解いたのじゃ。
「梧桐一葉 落ちて天下の秋を知る」
図らずも秋の気配を感じた雨上りの宵であった。お蔭でワシャはびしょびしょになってしもうたわい。