大相撲の序ノ口力士が稽古中に急死した問題について横綱審議委員長の海老沢氏がこう言っている。「朝青龍問題とは次元が違う。あってはならないことで、協会は自浄しないといけない」前審議委員長の石橋氏も「(親方の)解雇は当たり前。その前に早く自分で身を処さなければいけない問題」と発言している。
テレビで、識者と呼ばれる連中ももっともらしい顔でこんなことを言っている。
「かわいがりというんですか、こんなことがずっと行なわれてきていたんですね」おまけに元力士だという眉毛を細く剃り込んだ男まで登場して「角材で殴られた」と証言する始末。
マスコミやその周辺の人間が「かわいがり」というしごきを今知ったような論調で口を極めて時津風親方ばかりを罵っているが、ちょっと待てよ。横綱審議委員も評論家も「かわいがり」を本当に知らなかったのか?相撲は高いので何年かに1度くらいしか本場所に行けず、もちろんご祝儀をたんまりと用意できないので部屋にもなかなか顔を出せない田舎のオッサンでも「かわいがり」というしごきが存在していることを知っているぞ。ちばてつやの『のたり松太郎』(昭和48年連載開始)の第6巻第3話には「可愛がられるのは、どっち!?」という話がある。まさに相撲部屋を脱走した若い力士が部屋にもどるために、兄弟子達にしごかれるシーンを余すところなく描いている。そして第7巻では、言うことをきかない松太郎に制裁を加えようとして大乱闘になり警察が介入してくるという話もあるほどだ。これって結構、相撲ファンやコミックファンの間では有名な話なんですけど……
それでも横綱審議委員もマスコミも「可愛がりなんてこと始めて知りました」ととぼけるのか。「可愛がり」は何十年もどこの部屋でも行われてきたことで、たまたま時津風部屋で表面化しただけのことである。そしてこの問題は朝青龍問題と表裏をなしていることも認識しなければいけない。「朝青龍問題とは次元が違う」なんて言うことを横綱審議委員がほざいていてはダメですぞ。時津風部屋は可愛がりすぎて力士を死なせ、高砂親方はバカを可愛がらなかったから傍若無人なモンスター横綱を育ててしまったのだ。時津風問題で朝青龍問題を誤魔化すのではなく、双方とも抜本的な外科手術を施す必要があるのではないか。