な酒なかー!

 板坂元さんは、「文章を書きたいんだったら酒なんか飲んではいかん!」と、その著書『何を書くか、どう書くか』(光文社)の中で警告している。文章を書く書かないは置いておくとしても、確実に脳味噌にダメージがあるらしい。かの文豪ヘミングウェイですら、酒に脳細胞をやられて破滅した。
 日垣隆さんも「唯一の商売道具である脳に損傷を与える酒はなるべく遠ざけたほうがいい」と、セミナーなどで言われている。
 まったく仰るとおりだ。ワシャなんて飲んだ翌日、ほとんどアルツハイマーのようになっている。前の晩の行動を一切覚えていないなんてことがよくあるのじゃ。日々、ワシャの凡脳が壊れていくのを実感している。

 でも、ちょこっとだけ言い訳をさせてね。
 小説家の丸山健二さんは『まだ見ぬ書き手へ』(朝日新聞社)の中でこう言っている。
《酒はサラリーマンの飲み物です。他人に雇われ、こき使われ、対人関係のうんざりする泥沼に投げ込まれ、人生の鍵を(他者に)握られてしまった人々にとっては、それはまさしく命の水なのです。》
 確かにそうですぞ。ワシャらは情けないが「酒」なしでは日々が暮れていかないのだ。もちろん丸山さんは肯定的に上記の文章を認めているわけではない。
《本物の自由を生き、未知なる創造の道をどこまでも突き進もうとする者にとっては、シアン化カリウムと何ら変わらないのです。》
 と、辛辣だ。

 タバコはすっぱりと止められたんだが、酒となるとどうもいけない。賢人たちの教えにそって「止めよう」と心に誓うのだが、美味そうな芋焼酎の香りを嗅いでしまうと、鉄の決心も溶解してしまうんですな。