犬の名前と狸汁 その2

 花火は素晴らしかったですぞ。丁度、真正面の真下で見ることができたので迫力満点だった。その後、K先生のお宅にお邪魔をしてビールとおつまみで歓談する。
 それにしても思想家の書斎はきちんと整理されていた。これは日垣さんや司馬さんの書斎を拝見した時にも感じたことなのだが、客観的に物事を思考できる知識人の周囲というのは、その脳内と同じで整然としているものなんですね。
「男の隠れ家」別冊の『書斎 男の愉悦空間』(アイデア・ライフ)に政治評論家(笑)の佐高信さんのゴミ箱じゃなくて書斎が載っていた。
《スペースは4畳半ほど。「どうぞ入って」といわれても一瞬ためらうほどの、まさに“足の踏み場もない”状態である。「僕は取材能力ゼロ。でも取材があるというから少しきれいにしたんだ。床が見えているからいいほう」》
 なにを自慢していることやら。これではまともな思考などできまい。資料をあたるにしても目的のものを探すことは不可能だろう。日垣さんは「思考を中断させないために、探しものは30秒以内にたどりつけるように整理しておく」と言っている。K先生の書斎も日垣さんと同じコンセプトで、佐高さんの書斎とは対極にあると言っていい。

 さて、書庫である。花火よりも圧倒された。さすが思想家と言うべきか、古今東西思想書がずらりと並んでいる。書斎の端から端まで並んだ『日本思想体系』や『東洋文庫』は使いこまれており、「置いてあるだけ」というK先生の言葉は照れ隠しなんでしょうね。そしてその書棚には自身の著書が1冊もなかった。これも自分の著作を一番目立つところに誇らしげに並べている佐高さんとはまったく違っている。
 またレファレンス本も充実していた。「K先生のお薦めは?」と尋ねると、次の2つを推薦していただいた。
『世界名著大事典 全8巻』(平凡社)、『随筆辞典』(東京堂出版)である。とりあえず日本の古本屋で注文しておきましたぞ。

 ありゃりゃ、もう出勤の時間になってしもうたわい。「狸汁」の話になかなか辿りつけまへん。
 てなことで、中途半端ですが行ってまいりま〜す。(つづく)