犬の名前と狸汁 その3

 西枇杷島の夜は深々と更けてゆく。K先生宅の南に開いた窓から、いつしか祭のざわめきが消えていた。それでは腰を落ちつけて飲みましょうか、ということになりK先生がお手製のブランデー梅酒を出してくれる。これが美味い。翌日が仕事でなければがぶ飲みをするところだが、ブラ梅は1杯だけにして、その代わりビールをがぶ飲みした。
 K先生の話は本の話から、花火会場になった庄内川の河川敷の話になった。
K先生「この辺は狸が出るんだよね。それも1匹2匹じゃない。あちこちの繁みに巣を作って居るんだ」
ワシャ「そんなに狸がいるなら捕まえましょう」
K先生「このあたりの河川敷は広いし天敵がいないんだ。だからいつのまにか狸が集まってきたんだね」
ワシャ「狸の肉は臭みが強いので大根、ゴボウなどを取り合わせて味噌仕立てがいいですぞ」
K先生「河川敷の食物連鎖の頂点に狸がいるんでどんどん増えているんだ」
ワシャ「え?狸が食物連鎖の頂点なんですか」
K先生「そうだよ」
ワシャ「ということは、狸を狸汁にしてワシャが食うと、西枇杷島河川敷の食物連鎖の頂点にワシャが君臨することになるんですな」
K先生「理屈の上ではそうなるよね」
ワシャ「そうか、ワシャが西枇杷島狸帝国の頂点に立つことができるのか」
K先生「何をわけの解らないことを言ってんの?」
ワシャ「ガオーッ!狸を食ってやる」
K先生「狸に対抗心を持ってどうするのよ(笑)」
ワシャ「ガオーッ!」

 午後10時、みんなに説得されて西枇杷島狸帝国の征服をあきらめたワシャは、明日の仕事もあるのでK先生宅を辞したのだった。あー楽しかった。