春爛漫 覚王山散歩(昼食) その2

(上から読んでね)
 西の入口を押して細長い店内に入ると、すぐに古本の棚があって、およよ!『齋藤茂吉全集第35巻』(岩波書店)が並んでいるではありませんか。中身を見れば、書簡集だ。齋藤茂吉自体に興味はないけれど、終戦(昭和20年)前後の庶民の様子については関心があるので、即購入。その他にも沼田多稼蔵『日露陸戦新史』(岩波新書特装版)、新刊本の『大震災下の福祉救援』(昭和堂)など6冊を買ってワシャの鞄はずいぶんと重たくなってしまった。
 話が延びているが、ここから結になる。
 ワシャは歴史が好きで、特に『坂の上の雲』を読んで以来、日露戦争が気になっている。だから前述の『日露陸戦新史』を買った。早速、帰宅して読む。この本は昭和15年紀元2600年記念に発行された本であり、序にも《帝国は日露戦争の結果外に対しては一躍列強と比肩し東亜に於ける覇権を握り内に対しては国防の不安を一掃史大陸発展の国是を遂行し得るに至り……》とまことに景気がいい。まあ現役の陸軍中将が書いたものだから仕方がない。
 この中に旅順総攻撃の下りがあった。凡将乃木希典とアホ参謀の伊地知幸介のコンビが多数の将兵を無駄死にさせてしまったあの攻撃である。死傷者5万余を費やしても陥落しなかったロシアの堡塁はべトン(セメント)で固められた鉄壁の要塞だった。その上、ロシアはこの当時の最新兵器である機関銃を堡塁ごとに備えてある。日本の将兵はなぎ倒されるためだけに総攻撃に参加しているようなものだった。
 このくだりは涙なくしては読めない。愚将め、べトンめ、機関銃め。
 ふと脇を見ると、今日の昼、食事に寄った店の箸袋があった。「手のべとんかつ うめだ」と書いてある。それが『日露陸戦新史』を読んだので「手の“べとん”かつ うめだ」としか読めなくなったのじゃ。

 長い割りには、詰まらないオチで、どーもすいません。