さらに人間ドック

【血液検査】
 ワシャは注射が嫌いじゃ。だから検診でも血液採取が一番苦手なのだ。でもやらないといつまで経っても終わらないから仕方なく看護婦さんの前に坐る。この時、ワシャの脳の中は活発に働いている。
「年配の看護婦さんと、若い看護婦さん二人、一人は細身の美人、もう一人はガッチリした人だ」
「年配の人は熟練していて、注射も上手いかも」
「そうだ、年配の人にしよう」
「でもすでに10人くらいの採血をしているから疲れているかもしれない」
「腕が疲れていると針を刺したときに手がぐらつくかもしれない」
「まずい、若い方にしようっと」
「やっぱりせっかくなら美人の方かなぁ」
「でもちょっとか弱そうだな」
「ワシャの腕に注射針を刺したとたんに貧血でも起こされたらかなわない」
「そうだガッチリした人にしよう」
「それにしても大きい人だな、柔道でもやっていそうだ」
「なんだか手荒に扱われそうだな」
袈裟固めに持ちこまれそうだな」
「思いきり針を突き刺されて裏まで突き出てしまうかもしれない」
「やっぱり年配の人にしようか……」
「いやいや美人に……」
「それとも……」
 と、数秒の間にこれだけの脳内ブレーンストーミングをしたのだった。それを躊躇と見た柔道家は、ワシャの腕をむんずと掴み、有無も言わさず針を突き刺したのである。
 ウギャアアアアア!
【視力検査】
 最近の視力検査はしゃもじで片方の目を押さえて先生の指し示す字を読むというものではないですよね。大きな双眼鏡のような機器の下に小さなレバーとボタンが付いていて、双眼鏡を覗いてCの開いている方向をレバーで選択してボタンを押すというものになった。一人でやれるのでついつい遊んでしまって、視力がよくないので実際には見えないんだけれども一か八かでやってしまう。それが結構当たったりしてCは小さくなっていく。ワシャは本の読み過ぎで視力は0.4くらいなんだが、時々、1.0になったりする。そんな時は「お、やったな」とか思ってしまうのだった。