書店の前を通りかかったら店の中から妖怪がワシャを呼んでいる。ふらふらっと誘われるままに店に入って、気がつけば本を何冊か購入していた。買うつもりはなかったのに本妖怪に誑かされたわい。手にしていたのは『明治妖怪新聞』(柏書房)『地方発 明治妖怪ニュース』(柏書房)である。
『明治妖怪新聞』の口絵に「奥州会津怪獣」という妖怪が出てくる。形は狸のようだが鼻が異様に長く先端が尖っている。目はギョロ目、口は耳まで裂け、鼠のような尾は体長の倍以上ある。獣の姿のくせに引きずるほどに長い黒髪を持っている。これがアンバランスでかえって不気味だ。この怪獣、何人もの子どもを襲った後に磐梯山中で撃ちとられたという。でもね、どうもそれは誤報だったらしい。怪獣のやつ、明治、大正、昭和、平成と生き抜いて、この間も秋田に出没している。こういった子どもに危害を与える化け物は一刻も早く駆除をしておかなければいけない。
夕べ、この本を枕元に置いたまま寝入ってしまった。そうしたらね、夢に妖怪が出てきたんですぞ。それもかなり怖い妖怪じゃった。
場所は体育館のように広いお座敷だ。そこで何百人もの大宴会が行われていた。そこに10人ほどの芸者が入ってきたのだが、その中に妖怪がいた。見た目は普通の芸者なのだが、異様に赤い目と裂けた口を持っている。そして30メートルも向こうからワシャを見つけると、宴会の客を蹴散らして襲ってきた。
ワシャは恐怖に駆られて宴会場から外へ裸足で逃げましたがな。猛ダッシュで暗い夜道を必死に逃げて、宴会場からずいぶんと離れたので立ち止まって後ろを振り返ったが、ワシャの逃げ足が速かったのだろう。憑いてきていない。
「ほっ」としたとたんにどっと疲れが出た。
その時、右ほほに髪の毛が触れるのでふと横を向くと、そこに妖怪芸者の顔があった。ワシャの背中に妖怪芸者が負ぶさっていたのじゃー!うわーーー!!!
3時30分に目が覚めてしまった。お陰でぼろ負けのブラジル戦を見ることができたわい。4−1の完敗なら小うるさいサポーターやマスコミもちっとは静かになるだろう。また4年後に期待しようっと。