平田博士

 平田博士は平田博士ではない。平田満似の博士を略して「平田博士」とワシャが言っているだけである。この博士、かなり素晴らしい研究をしている。大きな声では言えないが、人類を地震の恐怖から救い出そうという研究なのである。そしてその研究はかなり進んでいる。我々がいつ襲ってくるかわからない地震の驚異から解放される日も近いのじゃ。

大規模地震対策特別措置法」は東海地震の予知ができるという前提のもとに1978年にノータリンの政治家と研究費の欲しいハイエナ学者によって制定された。その後、この地震に基づいて膨大な予算と人出が費やされてきた。でも予知なんてできないというのが今や常識ですぞ。1978年以降、大山鳴動して地震対策・地震研究に翻弄され、その結果でてきたのが「どうやら東海地震の予知はできそうにない」という結論だった。
 だいたい東海地震の発生する場所というのは地下30〜100キロのプレート内である。監視機器といったって地表に近い場所にしか設置できないから、内臓にできた腫瘍を見つけるために、腹を撫でまわして診察しているようなものなのだ。わかるわけがない。
 ところが最近では地震動にP波とS波があるということがわかってきて、いわゆる衝撃波であるS波よりも早く振動エネルギーを持たない一種の音のようなP波が飛んでくる。この両者のタイムラグを使って地震の予知をしようというものである。例えば東南海地震紀州沖で発生した場合、名古屋の場合P波到達後、衝撃波が襲って来るまでに40秒程度のタイムラグがある。この40秒は長いですぞ。試してみたけれど我家にある5台のストーブを消して、コンロを2つ消しても時間が余る。年寄りでも40秒あれば屋外に避難することができる。とにかく身構えるだけでも被害は相当に違ってくるのである。
 すでに気象庁ではリアルタイムでP波の連絡が出来るところまできているという。後はその情報を得た政府、官公庁、放送局、災害関連企業などがいかに素早く住民にまで周知できるかが問題なのである。伝達の仲立ちに人力を介したのでは40秒は無いにも等しい。機械的気象庁の情報がそのままダイレクトに伝わらなければ被害の軽減は不可能だろう。
 それをどうするか、というようなことを平田満似の博士は日夜考えているのだった。