ネポティズム(2)

(上から読んでね)
 参加者の選考を進めているころ、事務所に一本の電話があった。電話の主は会社の有力関係者だった。
有力者「(猫なで声で)オラのせがれがイベントに参加したいっちゅうて泣くもんだで、ちょこっと参加者の中へいれておいてくれ」
担当者「(事務的に)申しわけございません。ハガキでご応募いただくことになっておりまして」
有力者「(木で鼻をくくって)おめえでは話になんねぇから課長と代われや」
担当者「(更に事務的に)課長とお話いただいても同様の結論ですので・・・」
有力者「(怒)バカタリ!オラを誰だと思っとんのじゃ、代われちゅうたら代われ、バカタリが!」
 その後の経緯は、電話を別室の課長に回したのでわからないが、いつのまにかその有力者の子どもはイベントにちゃっかり参加していたのである。
 これを「ネポティズム」という。縁者びいき、同族登用ということになろうか。

 電車の運転士はプロである。プロが命がけで他者の命を預かっている職場に、いかなる理由があろうとも身内を入れるべきではない。運転室の外で愛する子どもが泣こうが喚こうが、あるいはそこで死にかけていたとしてもプロはプロの仕事を全うすべきである。仕事を全うして私人に戻ったとき、心から子どもを愛してやればいいのだ。
 事件報道を聞いて、そんなことを思った。