懐かしい本

 昨日、東京の古書店から一冊の本が届いた。
「アグラへのぼうけん旅行」(あかね書房)という小学校高学年向けの児童図書だ。帯には「1967第13回青少年読書感想文全国コンクール 課題図書」とある。1967年、つまり昭和42年、ワシャが小学校3年生の時の本ではないか。なつかしいなぁ〜。
 ワシャはこの本で読書感想文を書き、応募し見事に落選した。まぁそんなもんだ。だけどこの本は大好きだった。実は今日知ったのだが、挿絵を武部本一郎さんが描いていた。道理で巧いはずだ。武部さん、創元推理文庫の「火星シリーズ」、「金星シリーズ」などの挿絵も手がけており、綺麗な女の人を描かせたら天下一品である。火星シリーズのデジャー・ソリスなんてもう極めつきの美女でやんした。
 この物語、インド人の少年ラルーが妹マヤに目の治療を受けさせるため、アラハバッドから遠くアグラまで400キロの徒歩旅行を敢行するというもので、小3のワシャが、夏休みに風通しのいい実家の居間で寝転んで読んだことを思い出した。そのときのわくわくする気持ちまで甦った。
 痴呆老人に対して「回想法」という治療が有効だと聞いたことがある。昔、使っていた道具などを老人に与えることにより昔の記憶を甦らせようというものだ。ワシャにはこの本が記憶蘇生の引き金になったんだね。
 著者のエイメ・ゾンマーフェルトはノルウェーの人で夫の仕事のためにインドに赴き、インドの子どもたちの生活実態をつぶさに見ることによってこの作品を上梓した。読んでいるとページからインド特有の土ぼこりが舞いあがってくるような、そんなリアリティのある一冊だった。
 この本を読んだ小3のガキンチョは「インドへ行きたい!」と夢に思ったものだが、一度、学生時代に行くチャンスがあったのだが、それを逸して以来、夢は実現していない。こいつは退職までお預けになりそうだな。
 38年ぶりの本に再会し、夕べは、一時、腰の痛いのも忘れて童心に戻っていた。童心にかえるとイライラが消えるんだね。う〜む、本の効能というのは奥が深いな〜あ・・・