父親 その2

「父親は、父親として、息子に嫌われようと、譲ってはいけないことは譲れないんだ。親父は息子に負けてはいけないんだ・・・と思うんだ」
 そんなもんだな。
「半年ぶりだったのに、優しい言葉も掛けてやれずに怒ってばっかりだった・・・」
 おいおい、泣くなよ。お前、泣き上戸かよ。
「息子の前で涙なんか見せられねえからな」
 で、ここで泣くってか、父親ごころってのも複雑だね。
「息子はさ、小さい頃、本当にかわいかったんだぜ」
 はいはい。
「いつも、お父さん、お父さんって、ベタベタくっついてきたものさ。その息子が新たな勉強を始めるために金が要るといって頼ってきたんだ。融通してやればよかったかなぁ」
 でも、お前は、お前の考えで、息子に金を出さなかった。そうだろう。
「息子と対面しているときは、そう思って居たんだが、冷静になってみると、自信がないなぁ」
 自信を持てよ、息子もいろいろ考えているって。最終的に息子には半分お前の血が流れているんだ。切っても切っても親子の縁ばっかりは切れやしねえよ。
「そうかな・・・」
 そうさ。
「優しい言葉をかけてやろうといつも思うんだが、なぜか最後は喧嘩別れになってしまうんだ」
 喧嘩するほど仲がいいっていうじゃないか。寅次郎とおいちゃんだってさ、心の底ではお互いのことを心配しあっているものなのさ。
「ZZZZZ・・・」
 聴いてないのかよ、おい、こんなところで寝るなって!
 イテテ・・・腰が疼きだしたじゃないか。おい、知り合い、起きろ!
 だめだ、幸せそうに笑って寝ていやがる。仕方ないなぁ、担いで帰るとするか。
 え、何だって?
 勘定?こいつの付けじゃだめなのかい?
 ええっ、こいつ、一見なのかい。分かった分かった、払うって、慌てるんじゃないよ。ほら1万円、渡したからね。
 くそ、小さい頃の息子と遊んでいる夢なんか、絶対に見させねえからな。尻をつねってやる。どうだ。これでも目を覚まさねぇか・・・大物だな、こいつ。あー重たい。なんだか随分と損をした気分だ。