岩熊さんフライパン事件

「岩熊」という異名をもつ知人と、信州白樺湖周辺の高原へ夏休みを利用してスケッチ旅行に出かけたことがある。高原のホテルに着いたのが午前9時、ホテルの駐車場に車を停めると、画材と缶ビールをトランクから下ろして、とにかく無事に到着したことを数人の仲間と乾杯した。う〜む、高原の風は下界の熱風とは一味違いますなぁ。1本飲みほすと、数人の仲間は三々五々高原に散らばってスケッチを開始した。ワシャはレンガ色のサイロがあったので蓼科山を背景にして描くことにした。
 岩熊さんはというと、彼は酒好きなのでクーラーボックスを椅子替りにして飲みつづけている。小1時間も過ぎたころには岩熊さんの回りに何本もの空き缶が転がっていた。
「気持ちがよくなった。ちょっと昼寝をする。うっしっし」と宣言をすると高原の入口にある黒い巨石によじ登りだした。ちょうどその石の上が平板になっており横になるのに最適だったんだね。こういう寝やすい場所を探すのは天才的だなぁ。木陰にもなっているし気持ちよさそうだった。
 ワシャはそれからスケッチのポイントを探して高原をうろうろしていたので岩熊さんのことをすっかり忘れていた。気がつけば昼を過ぎている。12時半頃にホテルの玄関前で集合となっているので筆をおいて集合場所に戻った。
 戻ってみると、岩熊さんはまだ石の上で寝ているではないか。時間と共に木陰は移動し岩熊さんは炎天下で脂汗を流しながら、それでも頑固に寝ていたのだ。真っ黒なフライパンのような石の上で岩熊さんはこんがりと揚がっていた。
 夜、岩熊さんが風呂に入る時、大騒ぎしたことは言うまでもない。
「あっちっち!しみるしみるしみる!」
 ガキじゃないんだから湯船で騒がないでくださいよ。ほら、となりのお客さんに湯が撥ねて迷惑ですよ・・・
 岩熊さんについては、どうでもいいんだけど、
http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=427365&log=20050614
に詳しい。