破壊王逝く

 今、1冊の分厚い本を開いている。平成7年(1995)発行の「プロレス全書」である。なんでこんな本を引っ張り出してきたかというと、先日、亡くなった橋本真也のことを確認しておきたかったからである。
 昭和59年(1984)、プロレスは興隆を極めていた。アントニオ猪木藤波辰爾長州力ジャンボ鶴田、天龍、前田日明、と日本勢は油が乗っていたし、外国からもハルク・ホーガンロード・ウォリアーズなどド迫力のレスラーが続々とやって来ていた。8月2日の蔵前決戦での猪木・長州戦は見物だった。そんなプロレスの季節に3人の若手がデビューをする。冒頭の橋本真也武藤敬司蝶野正洋である。
 通常、猪木や長州のオーラの前に新人は霞んでしまって見えにくくなるのだが、この3人はやっぱりスター性を持っていたんだね、諸先輩の中にあってもいつもギラギラと輝いていたっけ。
 3人の若手はやがて「闘魂三銃士」を結成して、当時、ピークをむかえていた藤波、長州に挑んでいったのだが、あえなく玉砕して海外遠征に出る。この遠征で武藤と蝶野は大きく成長するのだが、橋本は大きな実績を挙げることなく帰国するのである。その後、ヘビー級のキックを武器に「破壊王」として一歩一歩地力をつけて、ケガに泣かされながらも平成5年にIWGP王座を手に入れる。最近は手術をした右肩のリハビリをしながら復帰を目指していた。人生、これからというときに無念だったろう。
 因みに橋本真也の好きな言葉は「人生五十年下天の内をくらぶれば夢まぼろしのごとくなり・・・」だそうだ。潔い人生観だが、それにしても10年ばかり早いぞ。