仮装大賞の限界

 萩本欽一というコメディアンがいるが、コント55号と呼ばれた昔からこの人の芸風が嫌いだった。相手を執拗に弄(いじ)って笑いをとるタイプのこの人がお笑いを独占していた頃、あまりお笑いを見ることはなかった。その後、ビートたけしが登場し、この人は自分を落として笑いをとるタイプだったのでほっとして「ひょうきん族」を見たものだった。
 件の萩本氏、最近の唯一のレギュラーである「欽ちゃん&香取慎吾の第73回新・仮装大賞!!」に司会として登場し、相変わらず弄り芸を炸裂させていた。しかし萩本氏の旬はとうに過ぎており、彼は国民的コメディアンではなくなっている。もう「かつて国民的コメディアンだった人」ということでしかないのである。あるいは子どもたちは萩本氏のことを知らないのかもしれないのだが、萩本氏は相変わらず昔のままの意識でやっているから、テレビ慣れマスコミ慣れした今日日の子どもには歯が立たない。そつのないあるいは計算された答えが戻ってきて、萩本氏が狙ったほどの笑いが生まれないのだ。強く言えば滑っている。限界だな。
 番組のほうも団体戦に移ってきて、仮装というよりも仕掛け大会のような有り様になっている。賞に輝いたのも大規模な団体ばかりが目立った。昔のように洒落の効いた個人芸が少なくなってきている。
 そしてついには参加者の3歳児が出演間際になって泣き出したハプニングを大々的に取り上げて、番組にヒューマンなドラマ性を持たせようとしたのだが、残念!子どもは最後まで駄々をこねてついにその家族は出演できなかった。番組の最後で「またきてね」とかまとめてはいたがしりきれ蜻蛉の結末だった。番組が裏側を見せてはお終いだよ(まあ、この番組は昔から楽屋ネタをちょくちょく使ってはいるのだが)。
 わざわざ取り上げたこのハプニングも、よく考えると両親が仮装大賞に出たいというエゴのために、3歳のいたいけな幼児に、連日、練習と称した虐待が繰り返されたことを暴露してしまったのではないだろうか。
 そんな穿った見方をしているのは拙だけだったりして・・・