たまには仙谷さん話題から離れようっと その1

 ワシャがよく喩に出す例として、京都の環境NPOの理事長の話がある。仮にS氏としよう。S氏、閉ざされたある一部の世界では「権威」らしい。ある日ある時、S氏の講演会があってワシャも参加したことがある。
 話が始まって数分で、この人が「アル・ゴア系」の環境原理主義者であることがわかった。白熊の溺れる話、ツバルが沈む話など、とうの昔に陳腐化した話を素人向けに、実しやかに得々と話している。「駄目だこりゃ」と思ったが、会場の奥まで入り込んでいたので出るに出られず、90分の修行だと思って我慢することにした。これが幸いする。
 講義中盤に、アクシデントが起きた。生徒の間を試験中の教師よろしくうろうろしていたS氏は、受講生が、武田邦彦環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)を机に上に出しているのを発見する。そして、その本を手に取って高々とかざしてこう言った。
「皆さん、こんな本を読んでいてはいけません。この人の言っていることは妄言です」
 そこまでは良かった(良くないけど)。続けて誇るようにこう言った。
「私はこの人の本は一冊も読んでいません」
 ワシャはずっこけてしまった。
 読まなきゃいかんでしょう。自分と主張が違うからといって、対立する論者の発言を無視するだけでは議論は深まらない。相手が何を主張しているのか、自分の考えとどこが違うのか、一つ一つを丁寧に検証していってこそ、S氏の発言に重みが増してくると思うのだが……。
 再び「駄目だこりゃ」と思ったが、最後まで環境原理主義者の話を聴いた。残念ながらアル・ゴアの『不都合な真実』の焼き直しにしか過ぎず時間の無駄に終わった。でも、まだこんな原理主義者が権威として蔓延っていることがわかっただけでもめっけもの。あちこちで環境の話をするときには「環境リテラシーをつけよう」という話のところで度々S氏に登場していただき笑いをとっている。
(下に続く)