年始の番組2題

平清盛
 日曜日からNHK大河ドラマが始まった。主人公の清盛を、松山ケンイチが演じる。物語はまだ清盛の父の時代、清盛の出生の秘密を描いているので、松山君は出てこない。もちろんワシャの大好きなフカキョン(清盛の妻役)の出演ももう少し先になる。
 でも、初回から中井貴一中村梅雀伊東四朗などベテラン陣がいい演技をみせ、ドラマを締めていた。
 惜しまれるのは、女優陣である。眉が違う。平安時代末期、眉毛は毛抜きで処理して、置眉(おきまゆ)というものを別に額の上部に描くのが一般的であった。「枕草子」には女官たちが眉を抜くさまが描いてあるし、当時の絵巻物を見れば一目瞭然だ。
 人物のデザインを監修したスタッフが言い訳をしている。
平安時代の女性たちはまゆ毛を抜く風習があったのですが、全員のまゆ毛をメイクで隠してしまうより、キャラクターの個性に合わせたさまざまな「まゆ毛」にしたんです。》
 こういった歴史的事実より視聴率を優先する風潮が積み重なって、日本人の歴史認識を歪めていく。
 白河法皇の寵姫の祇園女御(ぎおんにょうご)を松田聖子が演じている。監修スタッフの妙なこだわりで、眉は薄くしているものの、肝心の置眉がないのでいかにも中途半端な顔になっている。きっちりと置眉を描いた方が、松田聖子の魅力が引き立つと思うのだが……。

【欽ちゃん&香取慎吾の第87回全日本仮装大賞
 たぶんそうなるとは予想していた。番組スタッフの「日本を明るくしよう」という意気込みはわかる。しかし、出てくるチームすべてが合格ではおかしいだろう。中には、「これは前回なら落ちていたな」と思えるものまでが、満点に近い点数で合格をしている。こんなんなら審査員いらないじゃん。というか、そもそも世間知の低い小学1年生を審査員席に座らせている段階で破たんしている。
 ただ、優勝をした「龍の骨ダンス」はレベルの高いアートになっていた。これは文句なく満点でいい。
 でも、趣味の悪いのもあった。第3位にはいった「赤ちゃん寿司」である。乳児にいろいろな柄の衣装をつけて、シャリのような白いクッションの上にのせる。要するに乳児を寿司ネタに見立てているわけだ。赤はマグロ、黄色は数の子、タコもあったなぁ。
 立川談志が、『談志の根多帳』(梧桐書院)の中で『後生鰻』という落語についてこんなことを言っている。
《冥利が悪い。子供を放ってしまうというのは嫌だ。子豚を放るくらいならいいが、子供を川に投げて「川にボチャーン」という落げも嫌だ。》
 この落語はブラックが効きすぎて、談志の歯牙には合わなかったのだろう。
 物語はこうだ。信心深い隠居が、鰻屋がさばこうとしている鰻を憐れんで高い金でその鰻を買い取る。そして前の川に逃がしてやる。そこに目をつけた鰻屋が、何度も何度も隠居が通る時分に合わせて、鰻を売りつける。定休日に、隠居が通りかかった。休みだから鰻がない。そこで、母親の抱える乳飲み子をまな板にのせて……だから、談志はこのネタをやらなかった。
 
 昨日の「赤ちゃん寿司」も見ていて愉快ではなかった。少なくともかわいい赤ん坊を食材に見立てるという発想そのものが嫌だった。さて、談志師匠ならどう言うだろう。