萩本欽一という偽善

 この人が「欽どん!」、「欽どこ」でブレークしていたころから、人をいじって笑いをとる芸風が嫌いだった。ビートタケシ、タモリ、明石家サンマをはじめ多くのコメディアンが自分を貶めて笑いをとることを厭わなかったのに対し、萩本は自らが滑稽さを演じることはなかった。
 いい例がある。萩本は浅草ストリップ劇場に育てられ芸能界に生きていくきっかけを掴んだ。しかし浅草での経歴を「恥」と思ったんでしょうな。萩本はそのことをひた隠しにして、浅草とも距離を置いたために浅草の師匠連から罵倒されることになる。浅草の時代をネタにしているビートたけしとは大違いだ。
 極楽とんぼの山本が北海道の事件をうけて吉本興行を解雇されたときも、「責任はぼくにある。だから野球をやめる」と言っておきながら、すぐに前言を翻し解散を撤回している。信念のない上辺だけを取り繕う偽善臭がただよう。
 そして今回の長野の政火リレーである。事後のインタビューでも終始へらへら笑っていた。愛が地球を救うのなら、なぜチベットの騒乱についての発言をしないのか。「沿道の皆さんとハイタッチがしたかったけどできなかった」じゃないだろう。少なくともこの茶番リレーに対して、抗議の声が上がっている以上、敢えてそれに出た自分の意見を厳粛な態度で述べるべきだった。
 萩本欽一という人は、おちゃらけることでしか人前に立てない二流の人物だね。ナンシー関がつまらないCMを萩本になぞらえてこう言っている。
「ズレ方、浮き方、そしてつまらなさの質感と構造が、見事に欽ちゃん自身のそれと合致してしまっている」

 それはさておき今日の政火リレーは見ものだなァ。中国以外で唯一大歓迎をうける場所を走るんだから。見事に人権とか自由がないということを体現してくれるだろう。沿道に一糸乱れぬ応援団が不気味な笑顔で旗を振るんでしょうね。もちろん警備隊なんてまったく必要がない。走者は悠々とただっぴろい道路をたった一人で行けばいい。
 でもわかりませんぞ。他の国でもやっているんで意味もなく大警備陣を伴走させたりして。それはそれで大爆笑だけど。
 せっかくだから欽ちゃん、今日走ればよかったのに。