まさに断ずべきに断ぜざれば反ってその乱を受く

 酔いはさめた。
 それにしても時間がなさすぎる。3人の命の期限は、11日午後20時30分、残りの時間でどんな手が打てるというのだろうか。残念ながら犯行グループはやる気だ。声明文を出してから沈黙を守っている。このことが不気味だ。もちろん日本の出方を待っているわけだが、彼らの次のアクションは、人質解放か、人質殺害の二つしかない。もちろん3人が無条件に解放されることを祈っているが、この国に思いをはせる時、複雑な心境にならざるを得ない。日本は国として、その尊厳を放棄してはいけないとも思うのである。
福田官房長官の父、福田赳夫は1977年のいわゆるダッカ事件で、「人の命は地球よりも重い」という迷文句を口走って、犯罪者の要求に屈してしまった。どう考えても人一人の命と、かけがえのない地球は比較にならない。10億人分の命と比べても地球のほうだんぜん重いのに、とぼけたことを言うものだ、と、このとき日本の首相の馬鹿さ加減に気がついた。
 今度は、地球ではなく「日本人の誇り」が比較の対象となっている。
 月間現代に「我、イラクにて襲われる」を書いた勝谷誠彦さんは、かの地で自らが遭難した場合、事務所を通じて声明文を出すことになっていたという。
日本国政府はいかなる妥協にも応じるな。見捨てよ」
 自らの意思で、イラクを訪れようとする人間は、ここまで決心して道を選ぶべきだろう。それが嫌なら行かなければいい。何が起ころうと、何にまきこまれようと自分の責任であるということを肝に銘じ、そして行動する。これが責任ある大人のジャーナリストであり国際的活動家なのではないか。
 そんなことを言っていても、つかまった3人は救出できない。動きの糞鈍い外務省などに対応を任せていれば、結果は明白だ。即刻、腐るほどの金を持たせたエージェントを、犯人たちが隠れているであろう地域に大量に投入するのである。大金にモノを言わせて情報収集をし、大金を掴ませて解決を図るのだ。それしか打つ手はない。自衛隊を撤退させるより、そのほうがはるかに尊厳の被害が少ない。
 それとも外務省、まさか国際的スナイパーのゴルゴ13に接触しようとはしていないだろうね。一時期活躍をした彼も今は寄る年波でなかなか動いてはくれないよ。
(そんなことを本当に考えていそうだから怖いんだわ、このお役所は・・・)