尻についての考察

 尻(ケツ)の観察をしたことがある。地方都市のとある公共施設でである。もちろん生ケツではなく、ズボンやスカートの上からであるが、早朝から夜になるまで1,000ケツほど見た。そしてひとつのケツ論を得た。
 まず、ケツ形状が露わになるズボン・パンツが圧倒的に多かった。そしてケツ形状のきれいな女(男のケツなんか見たくもない)はなかなかいないということが分かった。前から見れば化粧で飾った立派な女も、後ろ姿はかなり無責任である。とくにケツにはほとんど関心がないらしく、見苦しきものを平然と露呈しているのである。前姿に気合が入っているだけに、後姿の無防備さが悲しい。人に見られることを職業としている芸能人などはさすがに気を使っている。人の目に晒されていることを自覚し、努力している人は押しなべて美しい。
 一例をあげたい。上品そうな女が、スリムのジーンズを履いていた。前から見れば及第点の女である。それが後姿では、ジーンズが密着しているだけに扁平ケツが露骨に分かり、細いジーンズに無理やり太い足をねじ込んだために、生地が引きつり横皺が数本入ってしまったのである。細身のジーンズにこだわったがための悲劇といっていい。
 基本的に、上品で自らの容姿に気を配っている女はスカートであることが多い。なぜならスカートというのはケツの形をあいまいにするので品がいいのである。その点でジーンズやパンツは、ケツの形状をもろに見せてしまうものだということを覚えておいたほうがいい。楽なのだけれどもとても危険な衣服なのである。そのことを美人は知っているのだ。だから誤魔化しのきくスカートを履いてさりげなく自分のケツ点を隠しているのである。
 反対に下品な女に共通している履物がある。ジャージである。スポーツをしているのではない。街にいるのである。TPOをまったく考えていないその鈍感さが恐ろしい。そしてジャージ派は一様に太っていた。緊張感のない衣服や体型からは怠け者の臭みが漂っていた。