昨日、松平武元という実在の老中が時代小説の中に登場することを書いた。
『くらまし屋』の5巻「冬晴れの花嫁」と題されたいい話だ。途中でちょいと涙ぐんでしまうこともあった。未読の方一度手に取ってくだされ。なかなか味わいのある作品群ですぞ。読まれるなら1巻から順番がいいです。物語のベースの部分がつながっていますから。
この5巻ですが、これが老中同士の権力争いというものが仕込んである。それ自体はそれほど物語の大きな部分ではないが、政(まつりごと)を担う武士の生きざまが随所に見られ、おもしろい作品ですよ。
おもしろくないのが、現在の政を担う議員という輩たち。朝日新聞の社会面に載っている。
《自民、埼玉でも不適切会合か 県連青年局、公費支出は否定》
https://www.asahi.com/articles/DA3S15890961.html
ネット上ではチラ見せしかしないケチ朝日だから冒頭しか読めないけど、要は和歌山県議も埼玉県議も似たようなことをやっているという噺(バカらしい「噺」ということであえてこの字を使う)。
似たような話はワシャも聞いたことがあって、おそらく日本全国津々浦々政治家のレベルは、今、国民が目の当たりにしているものが正しい。ワシャの知っている議員集団はまだまともなほうなのだが、それでも意味のない視察には行きたがるし、行けば行ったで、飲み過ぎで視察会場では舟を漕ぐ。
視察費用も公費から支出されている。彼我どちらも見てきたが、この程度の視察と称する観光旅行が全国的に公費で行われているのは、大きな無駄と言っていい。
もちろん全部とは言わない。一部には真面目な議員もいますよ。でもね、大半はエッフェルネーサン、赤ベンツネーサンのように観光を楽しんでいる。
朝日から記事を引く。
《半裸姿の男性を撮影した写真付きの記事で指摘された会合は青年局の新年会後に埼玉県蕨市内で実施した私的な飲み会だと説明》
だとしてもさ、埼玉県議様でしょう。どんな場合、どんな場所であろうと己の身を律する、これが重要だ。
『葉隠』に「酒席の心得」というものがある。江戸期の武士のように公から禄を食むものは『葉隠』を実践せよ。
「大酒にて後れを取りたる人数多なり。別して残念の事なり。先づ我が丈け分をよく覚え、その上は飲まぬようにありたきなり。その内にも、時により、酔ひ過す事あり。酒座にては就中(なかんづく)気をぬかさず、不図事(はからずごと)出来ても間に合ふ様に了簡(りょうけん)これあるべき事なり。又酒宴は公界ものなり。心得べき事なり」
訳す。
「大酒を飲んで失敗した人の数は多い。とりたてて残念なことである。まずは自分の酒量をよく知って、それ以上は飲まないようにしたいものである。だが気を付けていても時には酔い過ぎてしまうことがある。だから酒席ではいつも気を抜かず、思いがけないことが起こっても対応できるように考えておくべきである」
ここからが和歌山や埼玉の議員の肝に銘じてほしい箇所だ。
「酒席は人の目も多く、ハレの場であるからくれぐれも気を付けるべきである」
件の県会議員の発言を新聞から引く。
《公金を使うことは一切ない。会合の際は私のポケットマネーや会費で支払っている。》
アンタ、県費から禄をもらってんじゃねえの?だったらアンタのポケットにある時点でそれは「公の金」なのだよ。いちど『葉隠』を読んだ方がいいぜ。