岩手県は遠かった。
なにしろ2泊3日で3つの町を訪ねなくてはいけない。それぞれの場所で、関係者と打ち合わせを半日して、時間があれば現場を見て回る。気仙沼(宮城)、大船渡(岩手)、陸前高田(岩手)と隣接した自治体3つなんだけど、鉄路があの大震災で破壊され、相互の行き来はBTRというバスになってしまった。BRTに揺られること40分、これがなかなかの苦行で、腰痛持ちのワシャにはいささか厳しい旅でしたぞ。
調査の話は、また別の機会に譲るとして、たまたま、気仙沼の駅で買った産経新聞で話を続けたい。1面コラムの「産經抄」である。朝日の「天声人語」と比べると、格段に上等なコラムで、ワシャ的には好んで読んでいる。昔は「天声人語」に軍配が上がったんだけど、それは随分と遠い話になってしまった(笑)。
昨日の「産經抄」、電車内でサラリーマンが痴漢に間違えられた事件から書き起こされている。些細な痴漢冤罪事件だった。この事件を担当したのが今村核弁護士で、「冤罪弁護士」と呼ばれる有能な人。今村さん、この手の事件で十数件もの無罪判決を勝ち取っている。この人が59歳でなくなったことをコラムニストは昨日(11月1日)に知ったという。ワシャはこのコラムで11月2日に知った。
実は、岩手に旅立つ前の土日に、本の整理をしようとずっと使わなかった本を100冊ほどピックアップした。昔は友達のパセリ君が貰ってくれたのだが、今は彼も蔵書が増えすぎて受け取ってくれない。まぁブックオフで処分するしかないなぁ・・・と思いつつ、段ボールに入れてきた。
そのときに入れた本の一冊を思い出したのである。今村核『冤罪と裁判』(講談社現代新書)。 10年くらい前に「裁判」とか「犯罪被害者」に興味をもった時期があって、そのときに求めた一冊だった。
いろいろな冤罪裁判のケースが示されて、とても興味深い一冊だった。 しかし、最近はそっち系から離れていて、とにかく書棚がパンパンなので、泣く泣く段ボールに入れた一冊なのだ。しかし段ボールに入れた直後に、「産經抄」に出てくるとは・・・。「これも何かのご縁でしょう」ということで、自宅に帰ってすぐに玄関わきに出していた段ボール箱から『冤罪と裁判』を棚に戻したのでありました。
昨日、新幹線で東京から愛知に向かっている途中のことである。「ひかり」から「こだま」に乗り換えるためにワシャと仲間の3人は某駅で降りた。「こだま」が来るまで時間があったので、ホームは閑散としている。でも「こだま」の時間が迫るにつれて、ワシャらの後ろに行列が形成されていった。ワシャの後は子供連れのグループで、これがうるさかった。30~40代の女性と、おそらくその子供たちであろう女子小学生の10人ほどの団体が姦しい姦しい。子供たちもみんな大きめのキャリーケースを引っ張っているので、今から旅行にでもいくのだろうか?
ようやく乗り換えの「こだま」が入ってきた。下車する人を待って、ようやく先頭に並んでいたワシャのメンバーが乗り込んでいく。ワシャは4番目に12号車(指定席)の車内に入った。
けっこう混んでいる。ワシャらの席は中ほどなのでかなり進まなければならないが、前から若い男性が通路をあわててこっちへやってくる。寝過ごしたか(笑)。ここで降りるんだね。ワシャの前を行く仲間は身を寄せてその男性を通した。ワシャは12号車に入ったところだったので、空いていた1列目3人掛けのところに入って男性を通してあげようとした。
ところが、ワシャが通路を空けると、ワシャの後ろに続いていた10人の集団が雪崩れこんできて、どかどかと4列目くらいまで侵入してしまった。それも片側に避けようとするわけでもなく母子がゴチャゴチャに先を急いで塊になっている。
先を急ぐ男性は行く手を阻まれた格好だ。仕方がないので男性は、キャリーケースを持ち上げて、自分だけでも通れないかと努力している。
母子集団の先頭のカーチャンは気が強いんでしょうね、通路片側に身を寄せることもなく「邪魔ね」という嫌悪を表情に出して男性を睨んでいる。だから4列目のところで詰まってしまった。
気ィ強カーチャンが後ろの子供に「あんた座席番号は何番?」と言い出した。座席番号くらい先に確かめておけよ。そんなことを確認する前に、通路を空けて通してやれよ。
そしたらでかいピンクのキャスターバッグを引いていた小柄な女の子が「1列B」と答える。
カーチャン、窓上の番号を確かめて1列目が入口すぐの席だと認識したようだ。そしてそこに立っているワシャを鬼のような形相で睨んできた。カーチャン、ワシャを悪者にしていないかい?ワシャは通路を空けているだけだっせ。
先を急いで通路に詰めかけた母子団体に原因があることは明らかで、男性が下車できないのも間違いない。ベルがなっている。仕方がないのでワシャが波動砲を発射した。
「とにかく通路片側に避けなさい!!」
カーチャン一行は、度肝を抜かれたように通路を空けて、男性が通ることができたのだった。次は早めに降りる支度をしておきなさいよ。
これなんかも、ジェンダーを声高に叫ぶ人からは、女性たちのグループを性質の悪そうなオッサンが怒鳴りつけたパワハラとか言われかねず、「冤罪」になるかもしれない事案だ。そうなった時、今村核弁護士がいないので、「これは不安だなぁ」と考えたのだった。