KAZUⅠと日本丸

 知床半島沖の観光船沈没事故の痛ましいニュースが連日報道されている。行方不明の方々の1日も早い帰還を祈りたい。

 この事故発生以来、ワシャは奇妙な既視感に襲われていた。「KAZUⅠ(カズワン)」の状況が何かに似ているのでは・・・。鈍いワシャは昨日「はた」と気がついた。極めて、現在の日本の置かれた状況に似ていると思ったのじゃ。

 観光船が港を出る時に、少なくとも港のあたりの波は静かだった。金を返金したくない社長と経験の浅い船長には、その先の海のことは視野の外だった。

 現在の日本も同様であろう。周囲を海に囲まれた日本列島に生きる国民にとって、感覚の届く範囲は凪いでいるように思える。外洋は3m以上の波が荒れ狂っていても、港の周辺の波は穏やかだ。

 知床観光を楽しみに集まった老若男女が乗ったのは不備だらけの悪魔の観光船だった。

 無線機は壊れている。GPSは修理中で外してある。代替えの通信手段は圏外の携帯だけ。金儲けしか念頭にない無能な社長。船長は経験の浅い素人。観光船の組合からは距離を取っている。水温5度の海に出るのに、小規模船は救命艇不要というルール。伴走船はなし。事務所に詰めているべき運航管理者の社長は不在。さらに知床の海を熟知している多くの人が予想したとおりの天候悪化。さらに整備も不良だったろう。これだけ揃って事故が起きないほうが不思議なくらいだ。

 3mの高波に翻弄される船上(戦場)で、怖がる3歳の七菜子ちゃんを抱きしめて、自身もその恐怖と必死に戦っていたご両親の気持ちを考えると、心底くやしい。

 

 ひるがえって、我々が乗っている日本丸について考えよう。

 乗客を守る無線機はあるか?アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの自由主義諸国との情報交換は船長の持っていた圏外の携帯電話程度のものである。なにしろ「スパイ防止法」がない船であるから、情報共有が出来ないのである。日本に装備に関する情報を渡せばあっという間に全体主義国家に渡されてしまうからね。

 前社長はまともだったけど、現社長は、保身しか頭にない財務省に首根っこを抑えられ、さらに金のことしか考えぬ経済界には鼻面を掴まれてしまっている。そして財務省を始めとする日本丸のクルーたちは、頭でっかちの記憶力秀才ばかり。

 憲法9条のおかげで、軍事的組合にも入れず、強風で波の高い荒れ狂った東アジアの海に、救命艇どころかライフジャケットすら持たずに呑気に船を漕いでいる有様。その上、乗っている船は9条神話のせいで、船体そのものがガタピシの状態。ところどころ(沖縄、北海道)には亀裂が入って、そこから汚水が船内に入り込んでいる。

 脱炭素とかSDGsなどと浮かれ騒いでいるうちに、エンジンそのものが動かせなくなってきて、いつ止まってもおかしくない状況と言っていい。

 爆弾低気圧が北方から、半島から、大陸から3つも迫ってきている。社長兼務の日本丸の岸田船長よ、航海士のリン外相よ、悪天候が間違いなく予想されるこの段階で、きっちりとした装備を整え、船の整備を施し、乗客の安全を確保するためにもルールの変更が必要だと気付けよ。

 社長がボンクラだとどれほどの犠牲が出るのかは、今回の事故で身に滲みたろう。数多くの七菜子ちゃんを助ける責任が、たとえフニャチンとはいえトップには課せられているということを忘れてもらっては困る。

 今回の尊い犠牲を無駄にしてはいけない。直ちに不備のあるルールは換えよ。そして国民の安全を確保するための装備を一刻も早く準備すべきだ。