地球の未来のために

 ウクライナへの侵略戦争が始まって一躍有名人となった慶大の廣瀬陽子教授が現状を分析をしている。

《ロシア軍は「余力ない」 専門家が今後の戦況分析「国民に示しがつかないので東部2州は落としに」》

https://news.yahoo.co.jp/articles/03c3c55e67a0c068a365237d380fb4acc3d560b3

《キーウについては「キーウまで手を伸ばしてしまうと、お金も兵隊も取られてしまう」とし、「ミサイルなどで威嚇するのはたびたび行われる可能性は高いですけど、直接の軍事行動はキーウのことは置いておいて、まずは東部2州を抑えていくことによって、一点集中で兵力を注力して、できる限り戦費を節約しつつ、最大の戦果を収めていく方向で進めていくと思います」と語った。》

 まぁ旧ソ連地域の研究家でなくとも、報道されている状況を見ていると、そんな方向なんだろうなぁと想像はつく。

 廣瀬教授、今回のロシヤによるウクライナ侵略について『ハイブリッド戦争』(講談社現代新書)で大きく外してしまった。P220で、

《クリミアを例外として、ロシアは領土拡張を望んでいない。ウクライナの危機の際(前回)、ロシアがウクライナ東部についても併合を狙っているという論調が多く聞かれたが、それはまずありえない。》

 と言い切っている。この予測は大きく外れた。

 それでも廣瀬教授のまともなところは、このことを真摯に反省して、ご自身の研究が白紙に戻ったことを素直に認め、謝罪している。その点では研究者として評価をしたい。

 とはいえ、軍事ということに関していえばやはり素人で、このあたりは廣瀬教授が参考にされた文献をみても、小泉悠氏や黒井文太郎氏の名前は出てくるけれど、軍事の専門家の名前が見当たらなかった。このあたりが『ハイブリッド戦争』を読んでいても物足らなさを感じたところである。もう少し、自衛隊OBなどの意見を参考にすると厚みが出たのではないかと思っている。

 さて、ウクライナの現状である。ロシヤ黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が沈没した。このミサイル巡洋艦の喪失は、戦略上もプロパガンダ上もロシヤに不利である。

 さらに北部ではキーウを奪還され、せいぜい遠距離からミサイルを撃ち込むくらいのことしかできない状態で、のこされたのは廣瀬教授の言われる「東部2州に一点集中で兵力を投入し、戦費を節約しつつ、最大の戦果を収めていく方向」しかあるまい。

 とするなら、キーウ周辺で展開していたウクライナの部隊に重武装を施して東部に移動させ、ロシヤ軍に対峙させる。キーウ周辺は、国連の調査委員会が入っていることを名目にして「平和維持軍」でも「国連調査委員会警備軍」でもいいから、NATOではない数万単位の重武装軍を投入する。もちろんこの軍は闘うわけではなく治安と安全を維持するために存在をするだけ。表向きはね。

 ただ「東部を取れないとなった場合は、何をしてくるか分からない状況はあると思う」と廣瀬教授は言う。 この「何をしてくるか」というのは核戦力のことを指している。つまり負けが見えた時に、プーチンはなりふり構わず核兵器を使用するということになると予測している。 おそらくこれまでの独裁者の様子を聞いていればその選択肢はあるだろう。しかし、それを恐れて西側自由主義陣営が手を拱くと、大きな禍根を次の世代に残すことになる。 ここは腹をくくって、ロシヤの、それでもまともな思考を持った高官たちの語りかけるのだ。

プーチンに核のボタンを押させてはいけない」

 そう全世界のありとあらゆる人々が狂人を覚醒させるために声を上げよう。狂人は目覚めないかもしれない。しかし、その周囲に1人でもまともな「人」がいて、プーチンを阻止できれば、最初の2時間で4億人が死滅する核戦争は避けることができる。

 とにかく狂人を相手にしていると認識し、手を緩めることは世界の未来を閉ざすことになる。

 ここは世界のリーダーたちの真の力量を見せるところだと思いますよ。