日本舞踊

 地元の大きなホールで日本舞踊の発表会があった。発表会といっても本格的なもので、舞台のしつらえは本歌舞伎並のものである。24の演目が午前中から夕方まで続く。午前中、所用があって、顔を出したのは午後1時半だった。ホールの階段を駆け上って舞台を見れば、丁度、知人のお嬢ちゃんが「京人形」を舞っているところだった。タイミングもよかったので、間髪を入れず「〇〇屋!」と声を掛けたものである。
 仲間と合流し、何番か大向こうから声を掛ける。「まってました!」「たっぷり!」「〇〇屋!」
 清元の「青海波」(せいがいは)を舞った名取がよかったねぇ。柳腰で姿がいい。舞姿に艶がある。昨日の中ではピカイチだった。上村松園の作品に材をとった「序の舞」も結構でございました。幕があがると広い舞台に銀の屏風が並べられ、その前に松園の絵から抜け出てきたような緋の振袖が立っている。動き出せば、日本舞踊であるのだが、ここは能の「序舞」(じょのまい)を見たかった。
若いお嬢さんたちの舞も、それぞれ初々しくて見所がありました。時たま、足が滑ってズルッとなるところなんかもご愛嬌で、長唄や三味線の音色を楽しませてもらった。
 終演近くになって、幹部クラスの舞が始まった。「京鹿子娘道成寺」(きょうがのこむすめどうじょうじ)を当代の鴈治郎丈のような名取が舞ったが、これはいけなかった。「京鹿子娘道成寺」は舞の中でも大ネタ中の大ネタで、歌右衛門丈でも玉三郎丈でもとても苦心した舞であった。玉三郎の「道成寺」をテレビで見たところだったので、その落差が目についてしまった。とくに名取さん、腰回りがずっと見てきた出演者の中でも鴈治郎だったので、やや興ざめだった。夕方から宴席の約束があったので、太巻きを見ているのもなんだったんで、途中で失礼をしてしまった。「青海波」の舞なら中座することもなかったんだけどね(笑)。