昨日、賑々しく新御園座が開場した。歌舞伎ファンにはとにかくありがたい。へんてこな名前のついた金山駅前の市民会館では、いかにも田舎の興行そうろうだったからね。
午前10時30分、名古屋の地下鉄伏見駅6番口から地上に出る。そうすれば目の前に御園座が見える。これね。
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隈研吾氏デザインの「なまこ壁」「御園座レッド」「市松模様」などが特徴だ。建物については、言いたいことは山ほどあるけれど、寿ぐために日記を書いているので、今日は言わない。
さて杮落し興行の初日である。こいつぁ通しで観るしかないでしょう。ということで全狂言を午前11時から午後8時半まで観た。疲れたけれど、いい疲れだし、なかなかいい役者が育ってきた。一時期の歌舞伎界はどうなることかと心配したけれど、実力のある若手の台頭が著しく、もう少しの我慢だと思った。
演目である。昼の部の初手が「寿曽我対面」(ことぶきそがのたいめん)である。工藤祐経を左団次が演じる。かなりくたびれている。おそらく膝も悪いのだろう。座った姿勢からスッと立てない。そりゃそうだ、ワシャだって膝が痛いのだ。御年78歳の左団次丈、それでも頑張っている。曽我の五郎を又五郎、十郎を鴈治郎、だか二人とも小柄でぽっちゃりしている。それに花がない。見栄えがしませんが、杮落しなんで許そう。傾城の大磯の虎を壱太郎(かずたろう)、化粧坂の少将を米吉(よねきち)が演った。この米吉がいい。いまワシャの一番の注目株である。精進さえ怠らなければ米吉が、次世代の玉三郎になっていくと確信している。それほど所作がいいし、なんといっても表情がいい。がんばれ〜米吉!
昼の部二つ目が「二代目松本白鸚 十代目松本幸四郎 襲名披露口上」である。まぁ御園座なんで一列口上で、また口上を司るのが坂田藤十郎で、今公演の藤十郎丈の出番はここだけだった。口上の声も出ていないし、内容を覚えられないのか、紙を出してそれを読んでいた。腰や膝も悪いのだろう。お辞儀が出来ず苦労をしていた。とはいえ御年87歳である。人間国宝は座っているだけでいいのじゃ。ありがとう藤十郎丈。
昼の部のトリが「籠釣瓶花街酔醒」(かごつるべさとのえいざめ)である。物語はともかくとして、ブ男の主人公「佐野次郎左衛門」を幸四郎が好演した。ラストの女殺しのあとの凄惨な表情と言ったらありゃしない。声音が十八代目の勘三郎に似てきたし、立ち姿は当代の仁左衛門によく似たりで、今後が期待できる歌舞伎のヒーローの一人だろう。
さて、夜の部に行く前に出勤時間がきてしまった。また、この続きは明日にでも。