ワンピース

 今、『ワンピース』関連の本が3冊机上にある。1冊はコミックの『ワンピース』だ。第1巻で、表紙にはルフィーとゾロとナミが船上で大笑いしている絵である。長〜い『ワンピース』の物語のこれしか持っていないんス。
 もう1冊はスーパー歌舞伎の筋書『新劇場開場記念 SUPER KABUKI Ⅱ ONEPIECE』である。原作のキャラクターと、歌舞伎のキャラクターを比較してみるのが楽しい。「赤髪シャンクス」演じる平岳大は原作どおり格好よかったねぇ。ワシャの横2mばかりのところを通っていったが、精進次第では父親よりもいい役者に化けるかもしれない。
 3冊めがね、昨日、駅前の本屋で買った松島奈巳『歌舞伎座の快人』(淡交社)である。歌舞伎関連本なのでどちらにしても買うんだど、帯にね、《高麗屋三代の襲名も、『ワンピース』の大人気も、すべては、ここから始まった!》と書いてある。このところ『ワンピース』にはまっていたので速攻で購入しましたぞ。
 これがなかなか当たりだった。本ののっけに1984年の歌舞伎界のことが記してある。
《ベテラン・壮年スター・中堅のバランスがとれ、油の乗り切った役者がゴロゴロしていた。それぞれ江戸荒事、江戸和事、上方、踊りのスペシャリスト、ケレン(スペクタクル歌舞伎)と持ち味はバラエティ豊かで、同年代のライバルも見事に林立していた。》
 この文章の次のページに30人の歌舞伎役者が名を連ねているが、錚々たるメンバーが活躍していたんですね。これは羨ましい。残念ながらワシャはこの時代には間に合わなかった。
 こんな表も載っている。1984年には70歳以上3人、六十代3人、五十代4人、四十代5人のバランスだった。この時は團十郎玉三郎も30代、十八代目の勘三郎は29歳、三津五郎が28歳だった。
 これが2018年には、70歳超が5人、60代1人、五十代1人、四十代5人という有様で、一番脂の乗っている50〜60代が惨憺たるものなのである。

 作者の松島氏は言っている。歌舞伎を観だしたのが1984年でなかったらここまでははまっていなかっただろうと……。歌舞伎見巧者を自任する岩下尚史氏は「大丈夫である」と大見得を切ったが、ワシャは松島氏のもつ客観的な視点、危機感を支持したい。もうちょっとしっかりと『歌舞伎の快人』を読み込もうっと。