読書会

 昨日、読書会。課題は、佐藤優『学生を戦地へ送るには 田辺元「悪魔の京大講義」を読む』(新潮社)であった。この本は10月に行った東京メンバーとの読書会の折に紹介された本だった。すぐに入手はしていた。しかしなかなか触手が動かず未読本の棚に長く置いたままだった。
 前回の地元読書会の時に、友達のパセリくんから「読んでみようよ」と推薦があって、今月の課題図書とあいなった。

 少し難しいかなぁ。あまり読書の進まない年長のメンバーは手こずるのではないか……と心配していた。案の定、急遽の体調不良で欠席であった。
 内容は、終戦前後に京都大学で哲学の教授だった田辺元の『歴史的現實』という講義記録を佐藤優氏が3日間かけて噛み砕いた連続講座のまとめである。
 なにしろ『歴史的現實』を読みながら、そこに解説を加えていくという形式で講義は進んでいくのだが、この田辺の部分が読みにくい。
《所でこの可能性を不可能にする必然的な力は過去から働いてきている。だから歴史的現実は歴史的という言葉が決めるように差当り過去に由来する力が我々を押している事を意味するのである。》
 こんなところだけを切り出されても解りにくいですよね。でも、ずっとこの調子で延々と続くんですよ。
 この哲学者は2時間足らずの講義で「お国のために死ぬことがもっとも大切なことだ」と居並ぶ京大生に確信させ、そのまま戦地に向かえる人材に変化させてしまった。繰り返すが、わずか2時間でである。それもおそらく日本の若者の中でもっとも優秀なるディープなラーニングのできるエリート学生たちを、コロッと騙してしまった。それほどにこの講義には見事なレトリックや騙しの手法を駆使してさ、天下の京大生を納得させてしまうのである。その説得力の凄さはいかばかりであろうか。
 佐藤氏は《「お国のために死ね」と最も知的に、最も狡猾に叩きこんだ哲学教授》として指弾し憎むこと尋常ではない。
「悪魔のような思想家」
「戦争末期に箱根か軽井沢に籠ったやつは、絶対に信用したらだめです」
「ものすごく無責任な人です。そして自分が生き残ることとか、自分の恋愛に対しては、極めて貪欲だった」
「いろんなところにまやかしがあるのだけれども、レトリックは見事だよね。だから田辺元の催眠術には比較的簡単にかけられてしまう」
「その二時間で人の生き死にを決定づけてしまうというのは、やっぱりすごい構想力であり説得力です。でも、これはたぶんインチキなんだ。」
 などなど、佐藤氏は、知性としての田辺を大いに認めるものの、京大生への死の誘導に関しては極めて口汚く罵っている。ただし冷静に。
 佐藤氏の解説にも、物事を多面的に観るためにヒントが幾つも出てくるし、田辺の言説を鵜呑みにするのも、佐藤氏の解説を鵜呑みにするのも、どちらもよくないということが後半に展開してくるのだが、ううむ、時間が足りない。この続きはまた明日にでも。

 昨日の読書会で話が出ていたのが、安倍総理の平昌行きのことである。これについては「行かないほうがいい」ということで話がまとまった。理由は「危険である」ということに尽きる。