古典の日(続)

 昨日、「後ほど」と言っていたのが、翌朝になってしまった。
 古典の日の午後は「歌舞伎」だった。大看板は片岡仁左衛門、すでに72歳になっている。風格が漂うのも当然であろう。しかし少し声量が落ちたような気がする。頑張ってくだされ。
 その点、市川染五郎は成長が著しい。43歳はこれから精進を極める年齢である。テレビドラマの『妻はくノ一』以来、コミカルな役も定着してきた。少ししわがれた声も十八代目勘三郎を彷彿とさせる。あるいは勘三郎の次は染五郎ではないかとさえ思わせる。
 片岡亀蔵は道化や敵役にはなくてはならない役者になってきた。勘三郎と組んだ平成中村座で大きく成長した。一度、御園座の外で素の亀蔵丈に会ったことがあるけれど、現代劇にもってきてもいい悪役が出来そうな面構えである。55歳の亀蔵、油は乗り切って体も動く。これから10年くらいが旬であろう。平成の歌舞伎はいい怪優を得た。
 中村梅枝玉三郎によく似てきた。このところ続けて舞台を観ているが、七之助とともに次世代の女形を支えていくのが29歳の梅枝ではないか。
 時の経過は役者を育ててくれる。この間まで小僧だと思っていた役者がいつの間にかいい役者に成長をしている。染五郎丈が奈落に転落した時には、ハッとしたものだが、なんとか歌舞伎の神様に持って行かれずにすんだ。
 どうか今後とも歌舞伎が隆盛していくことを祈っている。チケットは取りやすいほうがいいけれど。