昨日、午後から歌舞伎仲間と「池鯉鮒パティオ」へ。全国公立文化施設協会主催の「松竹大歌舞伎」が巡ってきたのだ。
出演は中村時蔵、尾上松緑、坂東亀寿(かめとし)、中村梅枝(ばいし)、中村萬太郎である。看板は時蔵、松緑くらい。公文協ではこのあたりが精一杯の顔ぶれだろう。とはいえ、時蔵は、歌六一門では幸四郎、吉衛門に次ぐ実力者であり、女形として重きを成しつつある。その長男の梅枝は、玉三郎をよく研究している。雲の絶間姫の声音も仕草も玉三郎に相似たり。あと1センチ顎が短ければ玉三郎だったのに。次男は萬太郎、27歳のまさに初々しい若者である。素顔はなかなかりりしい顔立ちだが、白粉を塗るとやや間が抜ける。これも年齢とともに善くなってゆくだろう。
出し物は「鳴神」。物語についてはここをご覧くだされ。
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20130928
この時は、鳴神上人を橋之助が、雲の絶間姫を扇雀が演じた。今回は松緑と梅枝である。松緑には市川左団次が出てきた。声の枯れたところといい、顎の四角いところといい、色男は難しい顔立ちになりつつある。バイプレーヤーとしてはいい役者になると思うが、二枚目というわけにはいかない。不惑をこえてニンが固まってきた。
坂東亀寿は37歳。「三社祭」の「悪」を舞う。父親の彦三郎に似てきたけれども、これは萬太郎の「善」にも言えるが、もう少し切れのいい息の合った踊りを見せて欲しいなぁ。ワシャは勘三郎と三津五郎の「三社祭」を見た。さすがに親友同士の舞だった。ここに至るまでにはずいぶん時間が掛かるだろうが、精進あるのみ。
梅枝など若手たちにがんばってもらって、歌舞伎冬の時代をなんとか乗り切ってほしいなぁ。
公文協だから文句は言えないが、「池鯉鮒パティオ」の舞台の間口は狭い。狭い舞台にはここで文句を言っている。
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20131017
狭いからアクシデントが起きた。「鳴神」のクライマックスで、鳴神上人が怒り狂う場面。経典を引き割き投げ捨てる場面で、それが大薩摩(浄瑠璃語り)の床本を跳ね上げてしまった。こんなのを見るのは初めてだ。こういう意外な展開に遭遇するのも歌舞伎の楽しみですな。なんせライブですから。
座席の広さは名古屋市民会館より「池鯉鮒パティオ」が断然によかった。ゆったりと観られたのでそれに関しては言うことはない。