NHKの大河ドラマ「真田丸」がおもしろそうだ。少しホームドラマ臭があるが、少なくとも去年の「花燃ゆ」よりも期待ができる。NHKの中にいる「男女平等だから主人公は一年おきに男と女で交代にしよう」というバカのおかげで、大河ドラマが一年ごとにつまらなくなっている。情緒的人権主義者には申し訳ないが、物語としては「乱世」のほうが絶対に盛り上がる、これは間違いない。その場合、戦史の前面に出ている政治家、戦士が主人公になるのが順当だろう。史実の前面に出てこない女性はどうしても脇に回らざるをえない。
これが現実であるにも関わらず、NHKは女性主人公にこだわる。だから「花燃ゆ」のような「家政婦は見た」系の、歴史の重大事件や場所にはかならず主人公がいた……という話をでっち上げなければならない。それは不自然だし、話に蛇足がつく。基本的な歴史を知っている層が離れていってしまうのは当りまえだ。
かなり以前に、仏教史系の学者が「NHK大河も、その時代の歴史を大づかみにするという観点からは有益ではないでしょうか」と言っていたことを思いだした。しかし、このところのNHK大河は、話を捏造し過ぎて「歴史の大づかみ」すら危なくなってきている。
さて、「真田丸」である。もちろんこれは船の名前ではない。「城郭」をさす言葉で「本丸」「二の丸」の「丸」である。大坂城の南に付き出した格好の城郭を真田幸村が造成したので「真田が造った城郭」で「真田丸」という。そんなことは説明するまでもなかったですね。
主人公は、堺雅人である。同じくNHK大河の「新選組!」で総長の山南敬助を演じている。新選組という苛烈な組織の中で、誠実故に徐々に病んでいく総長役を好演していた。それが今度は真田幸村である。堺さんの育ちの良さそうな面差しは真田幸村には最適のように思われる。第1回は子供時代を演じているので、細かな部分はまだ見えないが、どのように大坂城の軍師へと変じていくのかが楽しみである。
主人公の父親が真田昌幸。彼は戦国期でも実に喰えないオヤジだった。ワシャが好きな2人の戦国土豪がいるのだが、一人は三河高原に勢力を張る奥平貞能(おくだいらさだよし)と、もう一人が真田昌幸なのである。両者とも大勢力の狭間に地所をもつ小さな土豪で、それが才覚と度胸のみで生き残り、子孫を10万石の大名にした。綱渡りのような人生も楽しいし、幅のある人間力が好きなんですね。
おっと、話が逸れた。昌幸を演じる草刈正雄さんのことである。草刈さんはとても好きな俳優で「美の壺」の進行役としても素敵な枯れ方を見せてくれて大ファンと言っていい。もちろん昌幸をどう演じてくれるのか楽しみだが、少しだけ不満を言うと、いい男に過ぎるのである。真田昌幸という戦国武将は、風貌に食えない男というのが出ていなければ行けないと思う。例として、泉谷しげる、奥田瑛二、串田和美、岸部一徳など一癖ありそうなのがニンのような気がする。もちろん草刈さんでうれしいけれど。
水木しげるの『妖怪事典』(東京堂出版)に「長面妖女」という妖怪が出ている。幸村の母親の薫役を演じる高畑淳子さんが、これにクリソツなのだ。誤解がないように言っておくが、ワシャは高畑さんという女優は好きである。バラエティに出てきても上品な雰囲気は好感が持てる。それはそれとして、今回の役は公家出身の誇り高い母を演じる。そのために垂髪(すいはつ)にしているので額が出て顔が前面に出る。元々高畑さんは現代風の顔立ちで面差しが長い。それが垂髪にするので、顔の長さが強調されてしまう。今は亡き中村芝翫を見るようで違和感がある。
最後にもう一人だけ。これはテレビガイドの『真田丸 完全ガイド』を見て知ったのだけれど、なんと我らが歌舞伎見巧者(笑)の岩下尚史氏が明智光秀役で登場するではあ〜りませんか。いい加減なことばかり言っていたので、ついに作家では食えなくなって役者になってしまったか。冗談ですよ。楽しみにしています。
岩下氏についてはここにも書いているのでお暇ならどうぞ。
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20130423
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20130526
そんなこんなを含めて「真田丸」は〇だ。