午後のビール

 終戦記念日のあたりというのは、なぜこんなに空が青いのだろう。入道雲の白、樹木の緑、それに降るような蝉の声が合わさってこの時期の風情となっている。70年前もおそらくそんな風景があったのだろう。残念ながら戦後の子のワルシャワには、当時を白黒の映像や写真でしかうかがい知ることしかできないが、映画とかドラマでそういったイメージが構築されているのだろう。
 それが昨日の「NHKスペシャル」は、白黒の画像に色をのせて、先の大戦をカラーでよみがえらせたのである。ずっと白黒で見てきた画面がカラーになるとリアルになると思いきや現実から離れていくような気もした。それにしても迫力のある画面ではあった。

 お盆はずっと仕事なのだが、合間に一日だけ空白ができた。これを逃すと休みはない。休暇請求をしてやっとのこと休むことができた。でね、ちょいとお出かけをしたのだ。岐阜市立中央図書館「みんなの森 ぎふメディアコスモス」である。先月の18日の土曜日に開館したてのホヤホヤ。本好きのワルシャワとしては、どんなところか見たいじゃあ〜りませんか。
 7月3日の日記
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20150703
で、この図書館でオープニングイベントとして実施された「本を使ったドミノ倒し」については、今も批判的である。本はそういうことに使ってはいけない。本に対する敬意を失ってなにが図書館だ。人を集めるなら何をやってもいいということではない。
 そのことはそのこととして、図書館本体の良さとは別物なので、正確に評価をするんですが、これがなかなか良い図書館ですぞ。ここです。
http://g-mediacosmos.jp/lib/
 建築家の伊藤豊雄氏の手による建床7,300㎡延床15,000㎡のほぼ総2階の建物である。建築家がこだわり過ぎたということで、図書館関係者には評判は芳しくなかった。でもね、一般の利用者目線で考えると、ここはなかなかいい感じの施設に出来上がっている。建築家が譲らなかった分だけ、一般受けするということなのだろう。
 まず、1Fメインエントランスが広い。これは大事なところである。ここを裏口のように造ってしまうと、全体がチープになってしまう。家で言えば玄関である。玄関で家の格が見えてくるのは言うまでもない。そこをきっちり造り込まずしてなにをアピールしたいのか。その点ではここは合格である。「裏口を造っているんじゃねえよ!」と怒っても、頑として譲らない建築屋もいるけどね(苦笑)。
 メインエントランスを入る前に、前庭に注目したい。
http://g-mediacosmos.jp/facilities/hiroba/teniteo.html
「憩い・にぎわい広場」というらしいが、ここが平日にも関わらずけっこう賑わっている。広場の東の端にステージが常設されていて、そこではなにもやってはいなかったけれど、明るい音楽が舞台のスピーカーから流れ出し、それが夏の日差しに合う。
 広場にはコンテナが10台くらい並んでいた。そこでピッツァとから揚げとか、飲食を提供している。コンテナの前には、日傘と椅子がずらりと並べられ、巨大なオープンカフェを形成している。
コンテナのひとつで、女子店員が美味そうな牡蠣を蒸している。
「いくら?」
イクラじゃありません。牡蠣です」
 おもしろいな。
「お値段はいかほどでしょうか?」
「1個400円です」
 ほう、生ビールと合わせても千円でお釣りがくるなぁ……。

 いかんいかん、図書館のことである。正面入り口を入ると広いエントランスホールがある。その正面がエスカレーターになっている。そこが吹き抜けになっていて、そのままのアプローチで2Fの図書フロアーに上がっていける。動線がいいなぁ。エスカレーター上昇するにしたがい、視界が開けていく。おおお、図書スペース(8000㎡)が360度見渡せるではあ〜りませんか。
http://g-mediacosmos.jp/cosmos/floor_map.html
 総2階で、建築家の意向が強く反映されている。関係者に聞くと、やりにくかったらしいが、行政のやり憎さなどどーでもいい。元々センスのない行政は口を挟まないことだ。そのかわり関係予算だけは惜しまない。口を挟んで予算を惜しむ、これがもっともやってはいけないことだろう。
 そういった意味から言えば「岐阜メディアコスモス」は成功した事例である。本好きでお時間のあるかたはぜひお出かけあれ。

 ざっと館内を巡り、おおむねの位置関係は理解した。1Fの準開架書庫も確認して、それから外へ出る。

 天気は薄曇りだった。でもね、ときおり、日差しが顔を出す。露天でビールを飲むというのは久しぶりだったので、開放感がビールの味を引き立てるんですね。蒸ホタテと蒸牡蠣もいただきました。う〜ん、夏の空の下、冷たいビールがたまりませんぞ。
 どうでもいいことだが、牡蠣を食するのは1月の末以来だった。やっぱり牡蠣は美味いですね(涙)。午後のビールによく合う。