「……江戸から京都までは百二十五里二十丁。鍛えぬかれた秋山大治郎の足ならば、十日はかかるまい」
 池波正太郎の『剣客商売』の一節である。このフレーズを書きながら、池波さんは、おもわず苦笑をもらしたという。その理由は、先ほど、つまりこのフレーズを書き始める直前に、新幹線で旅先から自宅にもどったばかりであり、その時のことを思い出したからである。
 疲れていた池波さんは、京都で新幹線に乗って、ついうとうととしてしまった。はっと目が覚めて辺りを見れば、もう品川に差し掛かっていたのである。現代の旅のスピードに、健脚の大治郎をしても10日を費やさなければならない江戸の旅の大らかさを感じてニヤリとされたに違いない。
 寅次郎の旅ものんびりとしているし……ジョットコースターのような日常を生きる現代人にはうらやましいかぎりですなぁ。

 今日は「日本の旅のペンクラブ」が制定した「旅の日」だそうです。なにもかも忘れて、ぶらり旅に出たいものですが、なかなかスケジュールも体も言うことをきいてくれません(笑)。