名城線散歩

 先日、日和もよかったので栄から金山まで散策する。愛知県芸術文化センターを出て、久屋大通の一本東の通りを南に歩く。この道は「武平通(ぶへいどおり)」と呼ばれる道である。久屋大通から120mほど入っているので、表通りの喧騒が伝わってこない。静かな道だった。
 かつてこのあたりは武家屋敷だったところである。慶長の名古屋遷都の際に、普請奉行の松井武兵衛が、清須からこのあたりに移って屋敷を構えたことで、通りの名前に転じたらしい。
 矢場町あたりで、久屋大通に出る。コーヒーでもと思い、かつて矢場町駅の東のオフィスビルの1階に小奇麗なカフェがあったのを思い出して、そこに向かう。
 ところがどっこい、カフェはなくなっていた。その代わりエンゼル広場で、タイの物産展をやっていたので、そこを覗いてみる。いやー、エスニックな香りが充満し、タイ語が飛び交って、名古屋に居ながらにしてタイ旅行の雰囲気でした。
 行き交う人々は、ビールやら色の濃い飲食物を盛った皿を手に持って楽しんでいる。ワシャは白っぽい服装をしていたので、その人たちと接触しないかと気が気ではない。ひと回りだけ、ぐるっとして、その一角を後にした。
 それから矢場町交叉点の「蘭の館」前の喫茶店に入ってコーヒーを飲む。オープンカフェテラスになっていて、「蘭の館」の緑を借景としてうまく使っている。パリのサン・ジェルマン・デ・プレのカフェを思い出した(行ったことはないけど・笑)。
 そこで20分程休息をして、それからまた南を目指して歩く。陽はすでにビルの向こう側に沈み、風は心地よい。散策するには一番いい季節だ。
 上前津に差し掛かかる。かつてこの辺りは古本屋が多く立っていた。ワシャも学生時代に、暇があれば足を運んでいたものである。しかし、今はもう見る影もない。交叉点のところにあった古書店、入り口にエロ本が置いてあって、入りづらかったなぁ。その北にわりとモダンな古本屋もあったのだが、今はもう跡形もない。周囲を見回せば2軒が営業しているのみだった。ううむ、やはりブックオフの黒船には抗しきれなかったか。
 途中、隆盛を極めるブックオフを横目で見ながら前津通りから大津通りに一本ずれて金山駅前についたのだった。
 清々しい散歩が楽しかった。