本を買う

 ワシャの同僚で「図書館は利用しない。本は買う」と言った男がいる。それも一つの本との付き合い方なので「そうなの」と聞き流した。それでもおそらくワシャよりも本を買っていない。この日記を読んでくれている仲間にドン引きされるといけないので、購入冊数は言わないけれど、いつもの本屋さんでは間違いなくワシャは断トツの書籍購入数である。これに古本屋やブックオフでの購入が加わるので、かなりの書籍が堆積していく。もちろん本読みのプロである作家やジャーナリストの足元にも及ばないけれど、素人としては書籍費のかさむほうだと思う。
 でもね、図書館も利用している。そもそもワシャにしてもそうだし、「本は買う」と豪語する同僚にしろ、無尽蔵に書籍費を持っているわけではない。収入の中の一部をそこに充てているわけだ。プロは手当たり次第に本を買う意味がある。しかし、ワシャらアマチュアは、予算に限度があるし、その予算が小さい。だから買う場合に迷う本が出るのは当然だろう。そうなるとどうしても確実な本ばかりになりがちになり、仕事上役立ちそうな本ばかりが並ぶということになりかねない。要するに視野狭窄に陥ってしまうのである。それが図書館で解消できる。自分の世界を広げる未知の本に簡単に手が届くのだから、利用しない手はないだろう。未知の世界に触れてみて「違うな」と思えば返せばいいだけのこと。「お!」と閃けば、購入し熟読すればいい。そういったことに図書館が使えるということなのである。
 ワシャの例で言えば、松岡正剛の『千夜千冊』(求龍社)が発売された頃のことであった。全8巻で10万円、この購入を即決できなかった。ケチなんですよ(泣)。それでね、図書館にあったので全巻を借りてみた。これが重い。丈夫で大きめの布のバッグが2つ必要で、運搬に手が痛くなるほどだったが、それでも何度も借り直した。途中、予約が入って、その中の何巻が借りられないこともあったが、それでも全巻を長期に借り続けた。その結果「やっぱり書棚に置いておきたい」と思い、最終的に購入したものである。
 自分でお金を出して買う意義は確かにある。それでも「図書館は利用しない」と言われると、それは違うのではないかとヘソを曲げておきたい。