ワルシャワ、部活辞めるってよ

 高校の入学式のことである。中学時代の一つ上の先輩に呼び出されて、サッカー部に誘われた。本当は演劇部に入りたかったんですよ(笑)。でもね、その頃、テレビドラマで「飛び出せ青春!」をやっていたので、「サッカー部でもいいか……」という安易な気持ちで入部してしまったのである。
 1年の時は、それなりにがんばった。ゴールの後での玉ひろい、部室の掃除、グランドの整備、遠征時の荷物運び、つまらないことばかりやらされた。
 それにワシャは団体行動というのが苦手で、それが先輩たちの意に添わなかったんだろう。うさぎ跳びとか、ベンチとか、いわゆるしごきってやつも「練習」に名の借りて毎日くらったものである。楽しい試合形式の練習はもっぱら2年3年と行儀のいい1年生の特権だった。
 中学から高校に上がったばかりの1年ボッコと上級生というのは明らかに体格が違う。1年ボッコから見上げる3年生は頑健だしデカかった。学生時代の先輩って怖かったでしょ。辞めたくとも1年間は懸命に耐えましたがな。
 おおむね頭の悪い1級上の先輩ほど理不尽だった。とにかく3年生が在校している間は、先輩たちのオモチャに甘んじていたものである。
 1年が過ぎ、3年が卒業すると状況が変わる。1年ボッコもずっと1年ボッコではない。2年に昇級するころには、背も伸びるし、体重も増える。小柄な上級生ならこっちのほうが、体格がよくなってくる。
 ようやくものが言えるようになって、退部を申し出た。監督の教師からも、頭数が欲しい先輩からも慰留されたが、意志は変わらなかった。

 結果論でしかないが、居心地の悪い部活をやっていた1年間よりも、自由気ままに学校生活を謳歌した後半の2年間のほうが絶対に楽しかったことだけは間違いない。
 環境を変えることに躊躇ってはいけない。閉塞した空間、不本意な時間に身を置き続けることのほうが無駄だし危険ですらある、そう思いますぞ。