動くのを止めると好奇心が減る

 浜松町のセミナーは得るところが多かった。詳細については言えないけれど、濃密な勉強会が4時間にわたって展開したのだ。
 午後5時10分、セミナーが終了した。講師も受講者もそうとう疲れたに違いない。「喉も乾いているので、有志で繰り出そう」ということになった。あらかじめメンバーの一人が店に目星をつけておいてくれたので、そこに向かうことにする。
 メンバーは残務処理があるとかで、「少し遅れますから先に行っててください」と言う。浜松町界隈は、碁盤目になっていて迷いようがない。場所を聞けば、角を1回曲がるだけで着く。
「まかせなさい」と大見得を切ったのだが、大門通りを100mも行かないうちに先頭のワシャは迷ってしまった。方向音痴極まれり。大門交差点でうろうろしていると、通行人に居酒屋のチラシを配っていた若いニーチャンが声をかけてくれた。
「どこかお探しですか?」
「わらやき屋という店です」
「ああ、それなら近くです。ご案内しましょう」
 と、言ってくれた。
「いいんですか?」
 と、一応断ったのだが、
「うちの店にはまた来てくれればいいですから」
 そう言いながら、わらやき屋の前まで誘導してくれた。ううむ、なかなか見どころのある若者である。こういう気働きのできる青年がいる間は、日本も大丈夫だろう。次回は「天地旬鮮 八吉」に必ず行きますからね。

 さて、わらやき屋である。
 これが当たりだった。正式名称は「わらやき屋 龍馬の塔」と言う。長ったらしい名前だが、どうやら土佐料理が食えそうだ。二階の座敷に案内される。長押には坂本龍馬の写真が何枚も掲げてあった。メニューを見れば、まっこといごっそうな料理がずらっと並んでいるぜよ。
 早速、店名にもなっている「カツオの藁焼」を注文した。要するにカツオのたたきである。これにニンニクのスライスをのせて岩塩で食す。
「うまい!」
 それから「うつぼのから揚げ」が美味かった。その他に「うつぼの柳川鍋」、「のれそれ」、「きびなごから揚げ」などを堪能する。
 講師を囲んでの居酒屋談義は、これまた充実したものだった。午後7時30分、都合5時間半に及ぶ有意義な勉強の会は、フィナーレを迎える。全員で「伝七一本締め」でお開きとした。
「よよよいよよよいよよよいよい、めでてえな」

 仲間に別れを告げ、店を出ると豪雨だった。ずぶ濡れになりながら浜松町駅に向かう。豪雨がちっとも気にならないくらい気持ちは充実していた。

 タイトルの「動くのを止めると好奇心が減る」はセミナーの最後に講師が言われた言葉である。若さを保つためには、好奇心を減らさないこと、そして好奇心を減らさないためにはつねにアクティブに動いていること、そして恋にも能動的でありたい、そんなことを思って雨の大門通りを歩いていた。