いい酒を

 日曜日に金山で友だちと飲む。ネーミングライツの愚かさを体現したような市民会館
http://www.bunka758.or.jp/scd01_top.html
の近くに、うまいつくねを食べさせてくれる店がある。落ち着いた店で、ここのカウンターの端っこに座って静かに飲むのがよろし。
 何度か通っているのだが、店の従業員から初めて「いつもありがとうございます」と言われた。ようやく常連になったかな。

 もう1軒、最近、ちょくちょく顔を出すダイニング・バーがある。そこにも立ち寄った。少し照明を落とした店は雰囲気がいい。止まり木で羽根を休めていると、カウンターの上に、片殻つきの大ぶりな剥き身貝が皿に並んでいるではないか。殻は光線の加減で黒く見えるが、実は深い緑色と言ったほうが正しい。
ムール貝?」
 と、マスターに確認する。
「パーナ貝です」
 という答えが返ってくる。
「パーナ貝?」
「ええ、ニュージーランド産の貝で、ムール貝の親戚みたいなものです」
「ほお、食べてみたい」
 そういう経緯で料ってもらうことになった。

 ガーリックとバターで味付けをしてグリルに入れる。それにオリーブオイルをふったフランスパンが添えられて出てくる。貝は貝だけでいただき、殻に残った汁はパンに注いで食べる。これがまた香ばしくていい。パーナ貝はビールと合わせる。その後、鮮魚のカルパッチョを肴に、出羽桜の熱燗を呑む。出技桜は、山形県天童市の蔵元の酒である。山形の米と出羽の山々から生まれる水で仕込まれ、淡麗で辛口なのが特徴だ。
 ネタとして首掛け型の扇風機を持参していたので、それをマスターに見せびらかしながら軽口を楽しむ。ほろほろ酔うとともに夜(よ)も更けていく。土曜日の浜松町も含め、酒はこういう呑み方がいい。